令和2年分の確定申告から青色申告特別控除65万円の適用には電子申告又は電子帳簿保存が要件になります

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個人事業者の青色申告特別控除65万円にはいくつか要件が課されています。その一つが正規の簿記の原則に従った帳簿書類に基づき作成された貸借対照表及び損益計算者その他の計算に関する明細書の確定申告書への添付(措置法25条の2)です。簡易方式や現金主義等により取引記録を作成している場合の特別控除額は、65万円ではなく10万円になります。ところが伝票や領収書だけでざっとした青色申告決算書を作成し、65万円の特別控除を受けている事業者が少なくありません。勿論所定の帳簿書類など備え付けていない訳ですから、青色申告決算書4Pの貸借対照表は空欄になります。小職の知る限り、これで65万円の特別控除額が税務署から否認されたと言う話は聞いたことがありません。可笑しな話ですがこれが運用の実態です。

令和2年分の確定申告(申告期限は令和3年3月)からどうやら事情が違って来る様です。平成30年度税制改正で基礎控除額10万円増額の見返りとして、青色申告特別控除額が55万円に減額されることになりました。但し
イ.その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度の要件を充たす電磁的記録の作成・保存を行っている場合 または
ロ.一定の電子情報処理組織を使用して、確定申告書に記すべき事項及び事業に係る帳簿書類に基づき作成された貸借対照表及び損益計算書等に記すべき事項に係る情報を送信した場合
は従来同様に65万円の特別控除額が認められます。
前者についてですが、会計ソフトやパソコンのエクセル表はこの電磁的記録に該当しません。承認には、国税関係帳簿の電磁的記録等による保存制度の要件を充たすことが必要ですので、一般的な中小事業者がこの要件をクリアするのは困難です。
(令和3年税制改正による電子帳簿等保存制度の緩和措置)
電子帳票等保存制度に係る事前承認制度が廃止されます。また国税関係帳簿書類は、正規の簿記の原則に従い一定の要件を充たす電子計算機を使用して作成・保存された電磁的記録であれば認められます。この結果、市販のクラウド会計ソフトの多くの利用が可能になります。一方で改ざん等の不正行為抑止のため、電磁的記録の隠蔽や仮装に拠る申告漏れがあった場合は、重加算税率が10%嵩上げされることになりました。この改正は令和4年1月1日から施行されます。

後者は電子申告をすれば良いのだから簡単と思われるかも知れませんが、そうとも限りません。貸借対照表及び損益計算書に記載すべき情報を、e-Taxで送信しなければならないからです。確定申告会場にあるPCを使って電子申告をした場合には、B/S情報等の送信ができません。この辺り、どの程度厳格に運用されるかは不明です。既に電子申告をご利用の方はお分かりでしょうが、「申告書等送信表(兼送付書)」の提出区分に決算書・収支内訳書は要提出と明記されています。電子申告促進のインセンティブとして、不十分な決算書の記載でも従来同様に65万円控除を認めるのか、或いは規則通り55万円控除しか認めないのか、今後の帰趨を見極めたいと思います。

 
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