避暑には未だ早い初夏の軽井沢

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四月下旬、久方振りに軽井沢へ出掛けた。プリンスショッピングモール内を疾走する孫娘の写真日付を見ると2016年9月になっている。嫁・娘・孫娘の女性限定の旅なので、愚生は仲間にいれて貰えなかった。そうすると少なくとも10年近くは足を踏み入れていなかったことになる。片田舎育ちの貧乏学生に高級避暑地など何の関りが有ろう筈もなく、初めて訪れたのは新入社員研修の時であった。軽井沢駅南に隣接した広大な敷地に晴山ホテルやコテージが建っており、ゴルフ場も併設されていた。細かな記憶は一切ないが、研修の合間に”出来る奴はゴルフをやっていいぞ”と人事担当社員に言われたことだけは何故か鮮明に覚えている。勿論ゴルフなどルールが良く分からず即座に辞退したが、今にして思えば随分勿体ないことをしたものである。
軽井沢には会社の保養所があった。温泉付きの立派な施設だったが夕食時など見知らぬ家族同士が顔を突き合わせるのが苦手で余り利用しなかった。近時、社宅や保養所等の福利厚生施設は運営経費が掛かる割に社員の評判が芳しくない様で、件の施設も何時の頃か売却処分されたと聞く。戦後復興型の福利厚生が時代にマッチしなくなったらしく、軽井沢に限らず伊豆・箱根辺りでも豪奢な会社保養施設を眼にする機会が少なくなった。往時旧軽エリアの一等地に建設されていたのが今回宿泊したホテルである。高級な会員制ホテルなど薄給サラリーマンには到底縁がないものと思っていたが、時が流れ愚生も何とか会員として利用できる時代になった。健康で実直に暮らしてさえいれば良いこともある様だ。この処、年金生活者の苦境を耳にすることが多い。平穏な老後に欠かせぬもの、それは健康と多少の蓄え、そして永年連れ添った伴侶であろう。有り余る程の財産は要らない。却って人の妬みを買い、相続などで親族関係がおかしくなる元だ。
会員制ホテルはお金は掛かるが、利点も多い。ゆったりと設えた部屋やレストランは落ち着いた佇まいで満足度が高い。平日の利用者には年配の夫婦連れが多く、年老いた母親をあれこれ世話する娘さんなどお見受けすると心が和む。インバウンド客は原則として泊まれないので目にすることは殆どない。京都・奈良が好きで良く旅に出掛けるが、当面は見合わせることにしている。数日前の日経にも、京都など国内観光地で日本人の国内観光地離れが進んでいるとの記事が掲載された。オーバーツーリズムがその一因らしい。風習や価値観の違いはあろうが、中国人その他インバウンド客の傍若無人の振る舞いに呆れ返ることがある。世間でもその様な事例が多いらしい。国民性かも知れぬが旅先への気配りと言うものがないのだろうか。欧米人には潜在的な黄色人種への偏見が強く、愚生も過去海外滞在中に嫌な思いをした。流石に個人で滞日中に差別感を表に出すことは出来ぬらしく、日本の観光地は清潔で食事も素晴らしい等と日本のマスコミ受けする様な忖度発言を繰り返している。サラリーマン時代に彼等を昼食にラーメンへ誘うと「ヌードル?」等と小馬鹿にした輩がいた。近時日本食に馴染んだのか、同一人種とは思えぬほどの変容だ。由って愚生は欧米人が本当に豚骨ラーメンを美味いと思っているのか半信半疑である。そもそも彼らは音を立てて食事をするのは不作法だと考えている。熱い麺を「啜(すす)らず」口中を火傷することなど出来ぬ筈だが。

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