生産緑地の2022年問題に対応する為に農家が知っておくべきポイント

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生産緑地に係る税の優遇措置が2022年に期限切れとなりますが、これを誘因として練馬区や世田谷区、江戸川区などで地価下落が起きるのではないかと言われています。玉突きで都心部に波及する可能性もあります。人口高齢化に伴う空き家の増加や近郊農地の減少を懸念する国は、生産緑地の面積要件緩和や他の農家・農業法人への貸出しを税優遇措置対象に含めるなどの対策を講じていますが、効果の程は定かでありません。斯様に大きな地価変動のインパクトを齎す可能性がある2022問題とはどの様なものでしょうか。また農家はどの様に対応すれば良いのでしょうか。

1.生産緑地とは何か
生産緑地とは、生産緑地法に定める要件を充たす市街化区域内の農地または森林で、特定の市区町村(東京23区や首都圏政令指定都市その他)が指定する土地を言います。500㎡以上の広さが有り、農林業の継続が可能な条件を備えているものが対象になります。指定を受けると農地以外への転用や転売が出来なくなります。建造物の新改築や宅地造成等の形質変更も出来ません。農業従事者死亡により農業等の継続が困難になった場合や、生産緑地指定後30年を経過した場合は、市区町村に対して土地の買取りを申出ることが出来ます。

2.生産緑地の相続税評価
市街地農地は宅地比準方式または倍率方式に拠り、市街化周辺農地は市街地農地であるとした場合の評価額の80%相当で評価します。生産緑地はこれ等の評価額に、課税時期から買取りの申出ができる期間に応じた減額割合(10%~35%)を控除して求めます。なお既に買取りの申出が行われている生産緑地や申出ができる生産緑地の減額割合は5%です。

3.税の優遇措置の内容
(1)固定資産税の軽減措置
農地に対する固定資産税の課税は、農地を一般農地と市街化区域農地に大別し、更に後者を生産緑地指定農地・一般市街化区域農地・特定市街化区域農地 に細分して、評価の決定と税負担の調整措置を行ないます。ざっとした税額のイメージですが、一般農地であれば1千円未満/10a・生産緑地指定農地は数千円/10a・一般市街化区域農地は数万円/10a・特定市街化区域農地は数十万円/10aと言った処です。同じエリア内であっても、一般農地並みの課税で済む生産緑地指定農地と宅地並み課税が行われる特定市街化区域農地とでは、極端な負担差が生じることになります。
(2)農地等の相続税・贈与税の納税猶予及び免除の特例
農業を営んでいた被相続人から一定の相続人が農地等を相続又は遺贈によって取得し、農業を営む場合には、一定の要件の下にその取得した農地等の価額のうち農業投資価格を上回る部分に対応する相続税額は納税が猶予されます。更にこの農地等納税猶予額は、農業相続人が次の何れかに該当することとなった場合には納税が免除されます。
イ.特例の適用を受けた農業相続人が死亡した場合
ロ.特例の適用を受けた農業相続人が特例農地等の全部を一定の農業後継者に一括生前贈与した場合
ㇵ.特例の適用を受けた農業相続人が相続税の申告書の提出期限から農業を20年間継続した場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予額の部分に限る)。但しこの適用が受けられるのは、特例農地等のうちに都市営農農地等を有しない相続人に限られます。因みに都市営農農地等とは、生産緑地地区内の農地で、東京都特別区を含む特定市の区域内に存在し、生産緑地の買取りの申出が為されていないものを言います。

特例農地等に付いて譲渡等が有った場合や、特例農地等に係る農業経営を廃止した場合、都市営農農地等について買取りの申出が有った場合、特例農地等が特定市街化区域農地等に該当することになった場合は、その>農地等納税猶予額の全部又は一部を納付しなければなりません。

4.30年間の営農義務が満了した場合の選択枝は3つ
地主は2017年の法改正で決まった10年間毎の指定延長(特定生産緑地制度)を選択することができます。再延長も可能です。これを選択しない場合は、市区町村へ買取り申出を行うか又は現状の生産緑地の儘にしておくことになります。買取り申出を行っても買取りがされなかった場合は、生産緑地法の制限が解除され、農地の開発・売却が可能になります。
特定生産農地の指定を受けず或いは買取り申出もせずに現状継続を選択した場合は、生産緑地の制限が続きますが、当初の生産緑地指定から30年経過後であれば何時でも買取り申出ができます。税制面では、現在適用を受けている相続税等の納税猶予は継続されるものの、次代への相続時には適用できません。また固定資産税については、経過措置の5年後に宅地並み課税となります。買取り申出を行わない限り生産緑地法による制限を受ける点、および30年経過後は特定生産緑地の指定を受けられなくなる点に注意が必要です。直ちに生産緑地の売却や開発事業を行う予定はないが、数年以内には開発を行う計画を持っているケースはこの選択肢をとることが考えられます。

5.国土交通省による地主へのアンケート調査から読み取れること
多くの生産緑地が指定期限の30年を迎え、大量の生産緑地が宅地に転用される懸念があるため、国土交通省は東京都内の対象農家にアンケート調査を実施しました。これに拠れば農地の全部又は一部の指定期間の延長を希望する農家の割合が8割を超え、希望しない農家でも直ぐに転用するケースは少ないとの結果になっています。従って懸念される様な事態が起きる状況にはないと結論付けていますが、果たしてどうでしょうか?
生産緑地を保有する農家、戸建て用地の購入予定者、何れの側にとっても難しい判断を迫られることになりそうです。
 ⇒令和4年3月時点の調査に依れば、指定生産緑地の内88%が特定資産緑地の指定を受ける見込みと言われています。2022年問題を誘因とする地価下落の話は、殆ど耳にすることがありません。

 
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