中国不動産の譲渡所得の計上時期ですが為替レート次第では受渡時ではなく契約時を例外選択することで節税になることがあります

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年明けの確定申告に備えて、中国にある不動産の譲渡所得に関するご相談や申告代理のご依頼が増えてきました。この作業過程で或る重要な事実に気が付きました。為替相場の動向を見ながら、譲渡所得の計上時期や中国元から日本円への交換時期を考えれば想定外の節税を行うことが出来る場合が有ると言うことです。無論これは、中国に所在する不動産の譲渡に限ったことではなく、米国不動産その他の海外不動産の譲渡にも応用できる話です。中国不動産特に上海に在るマンションは値上がり幅が大きく、また元/円の為替相場が元高・元安の何方にも動きやすい傾向にあるので節税効果が大きい事例として取り上げました。
1.譲渡所得の計上時期や外貨建て取引の円換算に関する税法規定
①譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期
譲渡所得の基因となる資産の引渡しがあった日によるものとする。ただし、納税者の選択により、当該資産の譲渡に関する契約の効力発生の日により総収入金額に算入して申告があったときはこれを認める。
(注)譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期は、資産の譲渡の当事者間で行われる当該資産に係る支配の移転の事実(例えば、土地の譲渡の場合における所有権移転登記に必要な書類等の交付)に基づいて判定をした当該資産の引渡しがあった日によるのであるが、当該収入すべき時期は、原則として譲渡代金の決済を了した日より後にはならないのであるから留意する。
②外貨建て取引の円換算
法第57条の3第1項(外貨建取引の換算)の規定に基づく円換算は、その取引を計上すべき日における対顧客直物電信売相場と対顧客直物電信買相場の仲値による。ただし、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に係るこれらの所得の金額の計算においては、継続適用を条件として、売上その他の収入又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の経費又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。
(注) 円換算に係る当該日(為替相場の算出の基礎とする日をいう)に為替相場がない場合には、同日前の最も近い日の為替相場による。
2.節税の事例 
①(事実関係)
上海市徐江区にある築23年、専有面積150㎡のマンションを令和6年に715万元で売却されたお客様の事例です。売却までは親族に使用貸借されていました。中国の個人所得税及び土地増値税は免税扱い、増値税と教育費付課税その他が35万元ほど課税されています。
売買契約締結日は令和6年1月6日です。この日の人民元/日本円のTTMは20.21円でした。増値税等を完納し買受人への所有権移転登記に必用な書類を交付したのは令和6年6月14日です。この日の人民元/日本円のTTMは21.93円でした。中国不動産の売却で最大の課題は外貨の転換規制です。売售人は中国籍でしたが婚姻に拠り日本に帰化されていたので、外国人扱いで5万ドル相当以下の元の転換規制を受けません。然し乍ら10年前に共有持分の2分の1を中国籍の実父から贈与されていたので、送金許可が下りたのは預金残の半分340万元{(7150000元-350000元)x50%}のみで、日本円相当額は72,780,400円でした。因みに日本での贈与税申告を失念していますが、増額更正の期間制限6年は既に徒過しています。
翌年の所得税確定申告の処理方針
税法の原則通り受渡時に譲渡所得を計上すると、総収入金額は156,799,500円になります。例外選択で契約時に計上すると144,501,500円に抑えられますので、所得税・住民税併せた税負担が2.5百万円軽減されます。例外選択ですが受渡時期が不明確な場合に限るといった制約がなく、納税者が任意に選択することが可能です。
中国元が日本円に転換されると、計上時TTMで算定した総収入金額と実際の日本円転換額との間に為替差損益が発生します。これは総合所得の雑所得として申告しなければなりません。本事例では約4.3百万円{7278044-(144501500-350000元相当円価額)×50%}の雑所得になります。限界税率を用いて所得税・住民税の税負担増を計算しますが、本事例では60万円になりました。逆に契約時から円シフト時までに中国元安に振れた場合は為替差損が発生しますが、この雑所得の損失は他の事業所得や不動産所得との損益通算が認められません。他の雑所得、例えば公的年金等の雑所得があれば通算できる可能性はあります。

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