居住用小規模宅地等の特例の適用が難しい場合でも配偶者居住権を利用して第2次相続の税負担を軽くする相続税対策があります

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52歳の主婦です。主人が所有するマンションに住んでいます。私は一人娘で、両親は都内にある父が所有する戸建てに住んでいます。この処父の健康状態が芳しくありません。若し相続が発生した場合は、母が実家の不動産を含む全ての財産を取得し、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減規定の適用を受ければ相続税支払いが生じないと単純に考えていました。然しながら何れ母が亡くなり第二次相続が発生すると、私にはこれ等の適用がないので多額の相続税支払いを余儀なくされることになります。今から何か相続税対策を施すことは可能でしょうか?

 

お話を伺うと相続財産の半分近くが実家不動産とのことですので、これに的を絞った相続税対策をご説明します。先ず第一次相続ではお母様が全ての財産を取得するのではなく、実家の建物に配偶者居住権を設定して、お母様が配偶者居住権とそれに対応する敷地利用権を取得します。 それ以外の実家の不動産に関する権利(配偶者居住権付き所有権)を貴方が取得します。敷地利用権を除く敷地の所有権は貴方が取得することになります。この場合の相続税は、お母様は配偶者の税額軽減規定を利用すれば相続税支払いが生じませんが、貴方は何某かの相続税を支払うことになります。そうするとお母様が全て相続する分割案に対し、一見不利に思えます。何年か後にお母様が亡くなられると、第二次相続が発生します。お母様の死亡に伴い配偶者居住権と敷地利用権は自動消滅し、これらの権利は所有権者たる貴方に法的に移転します。この場合に相続税の負担は生じないものとされています。これが味噌です。第二次相続では実家不動産に係る相続税負担が一切ありませんので、第一次相続と第二次相続を通算した税負担を軽くすることが出来ます。これが配偶者居住権を利用した相続税対策です。

本節税スキームを利用するためには、幾つか理解して置かねばならぬことがあります。
1.どの様なケースに適用すれば良いか
①第一次発生後の配偶者の住居確保と生活資金を優先して考えたい
②相続財産の大半を実家の不動産が占めている
③第一次相続と第二次相続を通じて相続税の負担を出来るだけ少なくしたい
2.配偶者居住権の設定方法と登記手続きは
①一般には被相続人が遺言書により配偶者に遺贈するケースと共同相続人が遺産分割協議書で合意分割するケースの2つが考えられる
②配偶者居住権は登記しないと第三者に対抗できない。従って登記を失念したまま第三者に売却すると制約がない一般の不動産譲渡になる

配偶者居住権の設定には、遺産分割に関する一定の手続きと不動産登記が必要になります。

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