グループ法人課税は連結納税制度と異なり中小企業を含む全ての法人に強制適用されます

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多くの中小企業経営者が、大手企業が選択適用している連結納税制度の如き面倒なグループ内取引の税務調整とは無関係とお考えの様です。ところが平成22年度税制改正で、資本金規模に拘らず100%支配グループ内の法人取引については強制的にグループ法人課税制度が適用されることになっています。概要は理解して置かないと、想定外の不利益を被ることになり兼ねません。

1.グループ法人課税の適用対象会社
グループ法人課税は「完全支配関係」がある法人間の取引について適用されます。完全支配関係とは ①一の者が発行済株式等の全部を直接若しくは間接に保有する関係、②一の者との間に当事者間の関税支配関係が有る法人相互の関係、と定義されています。「一の者」には内国法人だけでなく外国法人や個人も含まれます。代表的な5つの類型でご説明しましょう。
ⅰ)親会社P社が100%出資の子会社S社を設立した場合
P社とS社が適用対象会社になります。
ⅱ)親会社P社が100%出資の子会社S1社とS2社を設立した場合
S1社とS2社の間にも完全支配関係が有るものとして、P社とS1社及びS2社が適用対象会社になります。
ⅲ)親会社Pが100%出資の子会社S1を設立し、P社とS1社が共同で100%出資の子会社S2社を設立した場合
P社とS2社はS1社を通じて間接に完全支配関係が有るものとして、P社とS1社及びS2社が適用対象会社になります。
ⅳ)個人Aが夫々100%出資のS1社とS2社を設立した場合
S1社及びS2社が適用対象会社になります。個人とS1社及びS2社との間に完全支配関係が有りますが、個人と法人間の取引にはグループ法人課税制度の適用がありません。
ⅴ)個人Aとその同族関係者Bが共同で100%出資のS1とS2社を設立した場合
S1社とS2社が適用会社になります。個人と法人間の取引に就いてはⅳ)と同じです。

2.グループ法人課税制度の主な内容
(イ)100%グループ内法人間の資産譲渡損益の繰延べ
法人が完全支配関係にある他の法人に一定の資産を譲渡した場合に、譲渡法人の損益の計上は次年度以降に繰り延べられます。一定の資産(譲渡損益調整資産)とは固定資産・土地・有価証券・金銭債権・繰延資産ですが、売買目的有価証券や簿価が1千万円未満の資産は除かれます。
譲渡法人で繰延べられた損益は、譲受け法人で譲渡・償却・貸倒れ・除却等があった場合、両社に完全支配関係がなくなった場合、連結納税開始により譲渡法人が時価評価を行った場合などに該当すると、当該事業年度に譲渡損益を計上しなければなりません。なおこの規定の適用は、普通法人と協同組合等とに限定されます。
(ロ)100%グループ内の内国法人間の寄付金の損金不算入、受増益の益金不算入
完全支配関係がある内国法人間で寄付があった場合に、支出法人では寄付金の全額が損金不算入となる一方で、受領法人に於いては受増益の全額が益金不算入になります。資産の低額譲渡や高額買入が有った場合もこれに該当します。支出法人又は受領法人の株主である法人に就いては、寄付修正事由に応じて各社の投資簿価修正が必要になります。なおこの規定は法人による完全支配関係が有る場合のみ適用され、個人株主とその同族関係者により完全支配関係がある場合は適用されません。例えば親が所有するA社から子の所有するB社への寄付は適用除外になります。この理由は、個人による完全支配関係がある法人間の寄付に適用すると、相続税対策に悪用される懸念が有るためです。

(ハ)100%グループ内の法人からの受取配当等の益金不算入
グループ法人税制の導入により完全子法人株式等という区分が新設され、配当等の額については負債利子を控除しない全額が益金不算入になります。完全子会社株式等とは、配当計算期間の全期を通じて完全支配関係にあった他の内国法人の株式等をいいます。
(ニ)100%グループ内の法人の株式の発行法人への譲渡損益
株式をその発行法に対して譲渡した場合には、その譲渡損益を計上するのが原則です。ところがグループ法人税制では、100%グルプ内の法人の株式を発行法人に対して譲渡する場合、その譲渡損益は計上せずに相当額を譲渡法人の資本金等の額に加減産することになります。
(ホ)100%子会社の清算と繰越欠損金の引継ぎ
完全支配関係にある子法人につき清算が行われ残余財産が確定した場合、親法人ではその子法人の株式につき譲渡損益を認識せずに、譲渡損益相当額に見合う資本等の額の減少又は増加として処理します。これにより子会社株式の清算損の計上ができなくなることとの見合いで、当該子会社の残余財産が確定した場合には親法人が当該子会社の繰越欠損金を引き継ぐことができます。
(へ)中小法人向け特例措置の適用制限
資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小企業には、いくつかの課税上の特例措置が講じられています。ところがグループ法人税制では当該法人の資本金のほか親会社の資本金等も考慮する必要があります。親会社の資本金が5億円以上の場合は、その100%子会社について中小特例が適用されません。

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