消費税で中小事業者のトラブル原因になり易い3つの選択適用

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消費税は実に簡単な税目です。会計記録さえ正しく付けて置けば、いとも容易に申告書が出来上がります。にも拘わらず、税理士職業賠責任保険の税目別事故件数はダントツの1位です。何故でしょうか?私には良く分かりませんが、殆んど同じパターンで事故が起きていることは間違いありません。

1.課税事業者の選択適用に伴うトラブル
 
課税事業者選択届出書の提出を失念した
その課税期間の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高、及び特定期間(個人事業者は前年の1月1日から6月30日までの期間、法人は前事業年度開始の日以降6か月の期間)における課税売上高が1千万以下の事業者は免税事業者になります。ところが免税事業者は、仕入税額控除が受けられません。そうすると、多額の設備投資が発生する課税期間には不利益が生じますので、課税事業者を選択することが認められています。
課税事業者を選択するためには、適用を受ける課税期間開始の日の前日まで(事業を開始した課税期間であればその課税期間終了の日まで)に、所轄税務署長に対して「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなければなりません。これを失念して、提出期限が徒過する事例が多い様です。事業開始や多額の設備投資を検討している場合は、関連者間でキチンと情報共有をすることが重要です。

2年間トータルでの得失比較をしなかった
消費税課税事業者選択書を提出するとその効力は継続し、消費税課税事業者選択不適用届出書を提出しない限り免税事業者に戻ることが出来ません。また消費税課税事業者選択不適用届出書は、課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以降にしか提出できません(要は最低でも2年間は課税事業者を続ける必要がある)。
そうすると仕入税額控除が受けられるメリットと、2年間の免税を放棄するデメリットの差引きで、トータルでの得失を判断する必要があります。

2、簡易課税制度の選択適用に伴うトラブル

簡易課税制度による仕入税額控除と、原則方式による仕入税額控除の比較計算を失念した
事業者が「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すると、基準期間の課税売上高が5千万円以下の課税期間に付いては、業種毎に定められた見做し仕入率を用いて仕入税額控除の計算を行います。基準期間の課税売上高が5千万円を超える課税期間については、簡易課税制度による仕入税額控除の計算は出来ません。
選択の得失は、その事業者の実際の課税仕入れ割合と、見做し仕入れ率との大小比較で判断します。将来計数を予想して得失判定をする訳ですから、僅差の場合は結果が裏目に出ることもあるでしょう。そうした場合は仕方が有りませんが、明らかな乖離が予想されるにも拘らず試算を怠った場合は紛議に結び付く惧れがあります。簡易課税制度も1と同様に、最低2年間は継続しなければなりません。

期首期末の棚卸資産に係る消費税額調整を失念して簡易課税制度を選択した
免税事業者が課税事業者になる場合は、課税事業者となる課税期間の初日の前日に有する棚卸資産に係る消費税額を、その課税期間の課税仕入れ等の税額と見做して計算することになっています。これを失念して簡易課税制度の得失を判定すると誤るケースがあります。
逆に課税事業者が免税事業者になる場合は、免税事業者となる課税期間の初日の前日に有する棚卸資産に係る消費税額を、直前の課税期間の課税仕入れ等の税額から控除しなければなりません。この対策として、棚卸資産残高が多い場合は課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書の提出を検討する必要があります。

3.個別対応方式vs一括比例配分方式の選択適用に伴うトラブル

個別対応方式と一括対応方式の何れか有利な方を選択できるのに失念した
その課税期間の売上高が5億円超又は課税売上割合が95%未満の事業者が、課税仕入れ等につき一定の区分をしている場合は、個別対応方式又は一括比例配配分方式の何れか有利な方を選択して仕入税額控除の計算をすることが出来ます。この得失比較を失念して、消費税額を過大に納付しトラブルになるケースがあります。なお、個別対応方式は何時でも一括比例配分方式に変更できますが、一括比例配分方式は2年以上継続した後でなければ個別対応方式に変更することが認められません。

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