平成29年税制改正 中小法人が抑えるべきポイント

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29年度税制改正のうち法人税関連は、大規模法人向け中心になりましたが、簡単にその内容をご説明します。

1.法人税確定申告書の提出期限の延長の特例
法人税の確定申告と納付は事業年度終了の日の翌日から2か月以内と定められている。但し会計監査人の監査その他の理由で決算が確定しない場合に限り原則1ヶ月間の延長が認められる。
今回の改正ではこれが4カ月間に延長された。この結果、最長で事業年度終了の日から6か月後が提出期限となる。但しこれが認められるのは、会計監査人を置いた法人のみで、事業年度終了の日から3か月以内に決算株主総会が開けない常況にあることが条件となる。平成29年4月1日から申請ができる。

2.中小法人の対象制限
実態は大規模法人そのものだが、敢えて資本金を1億円以下に抑えることで中小企業向けの減税措置を受けようとする法人が見受けられる。これを規制するため、過去3事業年度の課税所得の平均が15億円超の法人には、租税特別措置法に定められた中小企業向け特例措置の適用が認められなくなった。
該当する制度としては
・中小法人の法人税率の軽減特例(平成31年3月31日開始事業年度まで2年間延長)
・中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
・中小企業の貸倒れ引当金の特例
・中小企業に適用される研究開発税制や所得拡大促進税制
などがある。平成31年4月1日以降に開始する事業年度から適用される。
なお欠損金の100%繰越控除や留保金課税その他の、法人税法に定められた中小法人に関する規定に付いては今回改正の対象外である。

3.役員給与の損金算入範囲の拡充
事前確定届出給与及び利益連動給与の範囲に、一定の市場価格のある株式や新株予約権を給付する給与が追加された。また税や社会保険料の源泉徴収後の金額が同額である定期給与も定期同額給与として扱われることになった。適用時期は、新株予約権に係るものが平成29年10月1日以降の支給又は交付決議分から、その他は平成29年4月1日以降の支給又は交付決議分からとなる。

4.中堅・中小企業向けの支援
①地域経済を牽引する中核企業向けの投資促進税制の創設
地域経済への貢献に就き、都道府県知事の認定と主務大臣の確認を受けてなされた事業計画に基づき行われる2千万円以上の設備投資については、一定の税額控除又は特別償却が認めらることになった。この制度の適用対象者は中小企業等に限定されて居らず、大法人も対象となる。
②中小企業向け設備投資促進税制の拡充
従来の中小企業投資促進税制の上乗せ措置部分を改組して中小企業経営強化税制を創設し、税額控除又は特別(即時)償却の対象となる対象設備の拡充を行うことになった。これまで対象外であった商業・サービス業の生産性向上に資する一定の器具備品や建物付属設備備が対象設備に加えられた。なお従来の中小企業投資促進税制は、上乗せ措置部分を除外し対象資産から器具及び備品を除いた上で2年間存置される。

5.研究開発税制の見直し
①研究開発費の一定割合を単純に減税する方式から、試験研究費の増減に応じた税額控除率方式に改めた。
②IOTやビッグデーター解析など「第四次産業革命型」のサービス開発を、制度の対象となる試験研究費に加えた。

6.所得拡大促進税制
①大企業については、前年度比2%以上の賃上げを適用要件として、税額控除の上乗せ措置を講じる。
②中小企業については、適用要件は据置いた侭で2%以上の賃上げには、税額控除の上乗せ措置を講じる。

7.特定資産の買換え特例

特例措置の内容につき一部見直しを行ったうえ、適用期限が3年間延長された。そのうち一号買換えと九号買換えの改正内容は次の通り。

①一号買換え(既成市街地等の内から外への買換え) 譲渡資産から事務所として使用されている建物等またはその敷地として利用されている土地等が除外された。

②九号買換え(長期所有土地等から国内の一定の土地等・建物等への買換え) 買換え資産のうち鉄道事業用車両運搬具について限定が加えられたが、その他の重要な変更はない。

 
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