平均功績倍率による高額な役員退職慰労金の更正処分、裁判の論点は?

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法人が退職した役員に対して支給する退職給与の額が、①その法人の業務に従事した期間 ②退職の事情 ③同業類似法人の支給状況 に照らして相当と認められる金額を超える場合には、その超える部分の金額は損金の額に算入されません(法令第70条の二)。ところが税務署がこれに基づいて行った更正処分の取り消しを求める訴訟で、東京地裁が出した原判決のうち国側敗訴部分を東京高裁が取り消したため騒ぎになっています。元より役員退職給与は吾々実務家にとっても重要テーマですので、何が議論になっているのか、当面の実務にどう対応すれば良いのか、を理解して置く必要が有りそうです。

施行令にある「相当であると認められる金額」ですが、一般には功績倍率法又は年当たり平均額法により計算します。実務では功績倍率法が多用され、退職直前月額報酬×勤続年数×類似法人の功績倍率と言う比較的簡単な算式で求められます。功績倍率は2~3倍程度が妥当とされ、3倍以内であれば税務当局も概ね認めている様です。

更正処分を受けた事案ですが、原告(売上13億円の金属加工メーカー)が採用した同業類似法人の最高功績倍率6.49倍には、功績等に関する特段の事情が認められないので、平均功績倍率3.26倍を超える部分(約2億円)は高額役員退職金に当るとして当局が否認したものです。特段の事情の有無は個別事案に於ける事実認定の話なので、本コーナーでは取上げません。問題は原審で東京地裁が示した相当額の判定基準にあります。東京地裁の見解は、”平均功績倍率を少しでも超えると直ちに不相当に高額とされるのは合理的でない。平均功績倍率に半数を加えた数(=1.5倍)に基づき算定した金額は相当金額の範囲内である。” と言うものでした。何故1.5倍なのか具体的根拠は示されていませんが、仮にこの判決が確定すると影響は甚大です。現時点での平均功績倍率は約3ですから1.5倍の4.5の功績倍率まで許容されることになります。もしこれが定着して平均功績倍率が4.5まで上がれば、この1.5倍は6.7ですから現在の平均功績倍率の2倍でも認められることになります。法人側の懐事情もありこの様にネズミ算式に増えるとは思えませんが、少なくとも平均功績倍率が漸増するのは確かでしょう。それでは理論的に上限の歯止めが効かなくなります。

当然国側は控訴し、二審の東京高裁判決では、国側が算出した平均功績倍率に基づく退職給与が認められ、原審が示した1.5倍は排斥されました。今後最高裁まで上告されるかどうかは分りませんが、当面実務では平均功績倍率の恣意的な事例抽出を避け、その1.5倍までのチャレンジ等も見合わせた方が良さそうです。

なお類似法人の役員退職給与支給データーの入手方法ですが、複数の文献や資料(日本実業出版社:中小企業の役員報酬・賞与・退職金の支給状況/TKC:月額役員報酬・役員退職金/その他)が公表されていますのでこれ等を参照することが出来ます。
 

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