平成30年度税制改正 中小法人が抑えるべきポイント

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平成30年度の法人課税に関する改正は、比較的小粒なものになりました。その中で注目すべきは、安倍内閣が5年越しに掲げてきた最重要課題としての「デフレ脱却と経済再生」施策の一環としての賃上げ・生産性向上のための税制改正です。

1.所得拡大促進税制の改組
  青色申告書を提出する法人が、次のイ及びロの要件を満たすときは、国内雇用者に対する給与等支給増加額の15%の税額控除が出来る。この場合に於いて、教育訓練費の額の増加額が20%以上で有るときは、給与等支給増加額の20%の税額控除が出来る。但し当期の法人税額の20%を上限とする。
 (イ)平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した残額が、比較平均給与等支給額の3%以上であること
 (ロ)国内設備投資額が減価償却費の総額の90%以上であること
  これに関連して、平均給与等支給額の計算の基礎となる継続雇用者の範囲を見直しました。現行の継続雇用者には”前期中に入社した人”や”当期中に退職した人”が含まれます。従って継続雇用者平均給与等支給額を計算する為には、月別の支給対象者数を計算・比較する必要がありました。改正後は当期と前期の各月全てに在籍している者に改められましたので、月別支給対象者数の計算・比較が不要になります。

2.中小企業に於ける所得拡大促進税制の改組 
  青色申告書を提出する中小企業者が、国内雇用者に対し支給する平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した残額が比較平均給与等支給額の1.5%以上であるときは、給与等支給増加額の15%の税額控除が出来る。この場合に於いて、次の要件を満たすときは給与等支給増加額の25%の税額控除が出来る。但し当期の法人税額の20%を上限とする。
 (イ)平均給与等支給額から比較平均給与等支給額を控除した残額が、比較平均給与等支給額の2.5%以上であること
 (ロ)次の何れかの要件を満たすこと
   ①教育訓練費の増加額が前期の教育訓練費の10%以上であること
   ②中小企業者等が経営力向上計画の認定を受けており且つ一定の証明がされていること
   
3.情報関連投資等の促進税制
  生産性向上の実現のための臨時措置法に定める”企業内外データーの活用計画の認定”を受けた青色申告法人が、その計画に従いソフトウエア・器具備品・機械装置の投資(取得価額合計が5千万円以上に限る)を行ったときは、30%の特別償却又は3%の税額控除(但し法人税額の20%が限度)が出来る。
  なおこの他に継続雇用者給与等支給額の対前年比増加率が3%以上であるときは、30%の特別償却又は5%の税額控除(但し法人税額の20%が限度)が出来る。

4.大企業に対する租税特別措置法上の適用要件の見直し
  大企業が次の要件の何れにも該当しない場合は、3年間の時限措置として研究開発税制・地域未来投資促進税制・情報関連投資等の促進に係る税制に定める税額控除の規定を適用しない。但し当期の所得金額が前期の所得金額以下である場合は対象外とする。
 (イ)平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること
 (ロ)国内設備投資額が減価償却費の総額の10%を超えること 

5. 中小企業者が取得した機械装置等に係る固定資産税の特例
  中小企業者等が平成33年3月末までに、生産性向上の実現のための臨時措置法に規定する投資計画に従い一定の機械装置・工具器具備品・建物付属設備を取得した場合には、3年間その固定資産税の課税標準額をゼロ以上2分の1以下の範囲内で市区町村が条例で定める割合を乗じた金額に軽減できる。特例を受けるには、中小企業者が先端設備等導入計画を策定して市町村から認定を受ける必要が有る。

6. 大法人の電子申告の義務化/代表者及び経理責任者の自署押印
  大法人(事業年度開始時の資本金が1億円超の法人)については、法人税や消費税の電子申告が義務化される。対象法人が書面で申告書を提出した場合には無申告扱いとなる。平成32年4月1日以降に開始する事業年度から適用される。
  また法人税申告書に於ける代表者及び経理責任者の自署押印が不要になる。これは全ての法人について、平成30年4月以降に提出する法人税申告書から適用される。

 
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