役員の定期同額給与の改訂並びに役員賞与の支給に関するご相談

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貴金属製品の販売・修理を営む資本金1千万円の株式会社(9月決算)です。役員は私と妻、母の3人です。お蔭様でこの処売上が好調で資金繰りにも余裕が出来たため、5月から妻と母の月額報酬を15万円増額して支給して居ります。冬には全員に臨時賞与(金額未定)を支給予定です。ところがご担当者から、”定期同額給与に該当しないので月額報酬の損金算入は出来ない。また役員賞与を支給するのであれば事前に届出書の提出が必要”と言われました。月額報酬の改訂には実施の時期的制約でも有るのでしょうか。若し不都合ならば当面どう対応すれば良いでしょうか。

 

先ず月額報酬ですが、増額支給した部分については損金算入が認められません。税務ロスを最小限に抑えるためには、極力早期に奥様とお母さまの支給額を改定前に戻して支給することをお薦めします。次に役員賞与ですが、既に事前確定給与に関する届出書の提出期限を徒過していますので損金算入は認められません。今回は支給を見合された方が宜しいかと思います。

法人が役員に支給する給与のうち、定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の何れにも該当しないものは損金の額に算入されません。また何れかに該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は損金の額に算入されません。

1.定期同額給与
定期同額給与とは、次に掲げる給与を言います。要は役員の月給です。
イ.支給時期が1ヶ月以下の一定期間毎で、その事業年度の各支給時期に於ける支給額または源泉税等控除後の金額が同額であるもの
ロ.定期給与の額に一定の改訂が行われた場合は、事業年度開始又は最後の改定前支給から、最初の改訂後支給又は事業年度終了までの支給額(又は源泉税等控除後の支給額)が同額であるもの
ハ.継続的に供与される経済的利益で、利益の額が毎月概ね一定のもの

今回の事例は、この内ロが問題になります。一定の改訂に該当するのは、①事業年度開始の日から3か月を経過する日までに行われた定期給与の額の改訂、②特殊な事情に因り事業年度開始の日から3か月経過後にされる定期給与の額の改訂、③役員の職制上の地位変更や職務内容の重大な変更に拠る定期給与の額の改訂、④業績悪化事由に拠る減額改定、の何れかです。ご相談内容からして①の通常改訂が相当しますが、残念ながら既に3か月が過ぎています。
要件を満たさない改定に係る給与の損金不算入ですが、当該役員の報酬のみが対象になります。従ってご主人は対象外です。次にどの部分の金額が損金不算入になるかです。その事業年度中に支給した当該役員に係る報酬の全額が損金不算入になる訳では有りません。増額した報酬部分のみが対象で、改定前の金額については損金算入が認められます。極力早期に改定前の報酬額に戻す必要が有ると申し上げたのはその為です。
逆に減額改定の場合は、改定前の定期同額給与のうち改定後の同額給与を超える部分の金額が損金不算入になります。

2.事前確定届出給与
事前確定届出給与とは、その役員の職務に就き所定の時期に、確定した額の金銭、確定した数の株式(出資を含む)若しくは新株予約権又は確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付き株式若しくは特定新株予約権を交付する旨の定めに基づき支給される給与で、納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届出をしているもの 叉は適格株式若しくは適格新株予約権を言います。定期同額給与と業績連給与はこれに含まれません。ご検討の冬の役員賞与はこれに該当します。
イ.役員がその職務の執行を開始するまでに、職務執行の対価の支払い時期及び支払い金額を決定し、決められた期限までに所轄税務署へ届出を行うこと。
・株主総会や社員総会で決議をする場合は、株主総会等の決議日から1ヶ月を経過する日、又は職務執行開始日の属ずる会計期間の開始日から4月を経過する日の何れか早い日が届出期限になります。 
ロ.次の何れにも該当しない場合は、事前確定届出給与に関する届出をしていること。該当する場合は届出の必要が有りません。
・定期給与を支給しない役員に対して、同族会社に該当しない法人が支給する金銭に拠る給与
・株式又は新株予約権に拠る給与で、将来の役務の提供に係る一定のもの

3.業績連動給与
業績連動給与とは利益を示す指標や株式の市場価格の状況を示す指標その他内国法人またはその内国法人と支配関係がある法人の業績を示す指標を基礎として算定される、金銭・株式・新株予約権に依る給与及び特定譲渡制限付株式その他に依る給与を言います。
対象法人は非同族会社や非同族会社と完全支配関係がある同族会社に限定されます。支給対象者ですが業務執行役員に限定され且つ全ての業務執行役員に支給されなければなりません。同族会社が業績連動給与を支給することは出来ません

 
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