同族会社の親族に対する給与支払には、損金性の判定が微妙なものが少なくありません。従って、税務調査でも対象にされ易い項目です。問題になるのは、①役員・使用人としての職務や勤務の実態がない、②職務内容からして不相当に高額であると判断される場合です。
法人が支給する給与は、委任に準ずる契約(会社法第330条)に基づく役員給与と、雇用契約(民法第623条)に基づく使用人給与とに区分されます。税務では夫々に取扱いが異なります。親族が役員に該当するのか、又は使用人に該当するのかを正確に判定することが重要です。取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事は全て役員になります。これ以外の使用人又は使用人以外の者(例えば相談役や顧問)で役員と見做されるのは、会社の主要な業務執行の意思決定に参画している者です。これをしっかり押さえなければいけません。
①役員給与の取扱い
役員給与については、退職給与以外の一定の給与(月額報酬や賞与)と退職給与は損金に算入されます。これが原則です。
例外として、隠蔽又は仮装経理により支給した金額及び過大な部分の金額は損金に算入されません。また退職給与以外の給与についても、定期同額給与・事前確認届出給与・利益連動給与の何れにも該当しないものは損金不算入になります。退職給与については過大部分が損金不参入になります。
ではここで同族会社に典型的に見られる事例を検討して見ましょう。
(事例1)
母親を役員に選任しているが、経営参画の実態が全くない。
⇒業務執行の有無に拘らず、法人税法上の役員に該当しますので、法第34条(役員給与の損金不算入)の規定により高額役員報酬として損金不算入になります。この場合母親の所得税がどうなるかですが、給与を受け取っている以上は給与所得として課税されます。
②使用人給与の取扱い
使用人に対する給与は損金に算入されます。これが原則です。役員給与の様な面倒な縛りはありません。
但し、法人の役員と特別な関係にある使用人に対する給与(給与とされる経済的利益を含む)のうち、不相当に高額な部分の金額は法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)の規定に拠り損金に算入されません。
(事例2)
他に職を持つ子供に給与を支給しているが、勤務の実態が全くない。
⇒雇用契約の存在が認められなければ、実質役員に対する給与として認定されることが多い様です。毎月同額であれば定期同額給与の扱いとなりますが、経営参画の実態がないので事例1と同じく高額役員報酬として損金不算入になります。
実質的に親である役員に対する給与と認定される場合もあります。この場合、親は所得税の修正申告を行ない、子は贈与税の確定申告をしなければなりません。
⇒雇用契約が認められとしても法第36条の規定により損金不算入となります。子の収入の取扱いは事例1と同じです。
事実関係に応じて判定されますが、強いて言えば後者の方が多少マシかも知れません。何れにせよ親族への給与支払に就いては慎重な対応が求められます。
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