消費税の免税事業者や簡易課税制度適用事業者が多額の設備投資をする場合の留意点

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税理士事務所と顧客が受託義務責任に係る損害賠償請求を巡って争うなど在ってはならぬことですが、現実には少なからず有る様です。特に多いのが消費税の免税事業者や簡易課税制度適用事業者が多額の設備投資をしたにも拘らず、所与の仕入税額控除が受けられなかったと言う事案です。税理士職業賠償責任保険の事故原因でも毎年トップに挙げられています。簡単な話なのに何故事故が無くならないのでしょうか?

先ず免税事業者に付いてのトラブルです。免税事業者である課税期間中に行った課税仕入れについては、仕入税額控除が受けられません。適用を受けるためには、課税事業者選択届出書を適用開始課税期間の初日の前日までに提出する必要があります。失念した場合の救済措置(税務署長の宥恕規定)は有りません。
提出漏れの原因は2つ考えられます。1つは顧客側の投資計画が税理士側にタイムリーに伝わらなかったこと。2つ目は税理士側の錯誤や思い込みに因り必要な届出が適宜に行われなかったことです。
顧客側は未だ検討段階なので税理士には計画を伝えませんでしたが、急に話が進んだとします。課税事業者選択届出書の提出期限は、適用開始課税期間の初日の前日ですから間に合わない可能性が出て来ます。構想段階でも税理士には伝えて置くことが必要です。
後者は特殊なケースでの納税義務の判定ミスで生じます。例えば平成25年1月1日以降の開始事業年度から、資本金1千万円以上の新設法人は課税事業者になるとの特例が設けられています。ところがこの取扱いが適用されるのは、設立第一期と第二期だけなので、第三期は原則通り基準期間若しくは特定期間の課税売上高等に拠り納税義務を判定しなければなりません。この場合に課税事業者選択届出書の提出を失念する可能性が有ります。税理士は法令を正確に理解しなければなりませんが、課税逃れ封じの税制改正が頻繁に行われるため錯誤の可能性も増えているのが実情です。

次に簡易課税制度適用事業者についてのトラブルです。課税事業者であっても、簡易課税制度適用事業者については設備投資に係る仕入税額を直接的に控除することが出来ません。これを失念して必要手続きを取らずに失敗するケースがあります。この場合は設備投資予定の課税期間の初日の前日までに簡易課税制度選択不適用届出書を提出しなければなりません。これに付いても顧客先からの情報伝達の時期の問題や、選択不適用届出書は簡易課税制度の適用開始から2年を経過した日以降でないと提出が出来ないと等の制約があります。

 
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