インボイス制度及び改正電子取引制度への対応についてのご相談

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何時も大変お世話になって居ります。現在賃貸マンションの外壁工事・屋上防水工事を施工中です。これが完了次第に、内部共用部分塗装・集合ポスト交換・オートロック交換工事を行います。弊社は来期から免税事業者の予定ですが、これ等の改修工事が高額特定資産の取得に該当しないかどうかの最終判断とインボイス制度の事業者登録に関してきちんと整理しておきたいと思います。併せて来年1月より実施される電子帳簿保存制度の見直しについてもアドバイスをお願いします。

 

高額特定資産とは、一の取引の単位につき、課税仕入れに係る支払い対価の額(税抜)が1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産を言います。従って施工業者との契約で各工事毎に区分した金額が1千万円以内であれば高額特定資産には該当しません。次にインボイス制度と電子帳簿保存制度に就いてです。偶々お客様各位に御案内状を準備していた最中ですので、出来上がり次第送付させて頂きます。ご参考になさって下さい。

お客様各位
                              松浦章彦税理士事務所     

毎々格別のご支援ご鞭撻を賜り深謝申し上げます。この処標記に関するお客様各位からのご相談やご質問が増えています。国税や税務専門誌の関連記事が多くなっているのが背景かと思いますが、業種業態や事業規模に拠っては対応に必要以上の労力を割く必要はありません。今回は令和5年分の制度改正も踏まえてこの辺りに就いてご説明します。

1.インボイス制度
課税事業者が仕入税額控除の適用を受ける為には一定の要件を充たすことが必要です。
イ.区分経理に対応した帳簿と区分記載請求書の保存
帳簿には、課税仕入れの相手方の氏名又は名称・取引年月日・取引内容・対価の額を記載しなければならない。
区分記載請求書には、請求書発行者の氏名又は名称・登録番号・取引年月日・取引内容・税率毎に区分して合計した税込対価の額と消費税額・請求書受領者の氏名又は名称を記載しなければならない。  
ロ.適格請求書は、書面での交付に代えて電子データーで提供することができる。
免税事業者や消費者など、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れは原則として仕入税額控除の適用が受けられません
適格請求書発行事業者になるためには以下の手続きが必要になります。
適格請求書発行事業者の登録申請が必要である。登録を受けなければ適格請求書の交付ができない。
課税事業者でなければ登録申請ができない。免税事業者が登録申請をするためには、消費税課税事業者選択を提出する必要(令和5年10月1日を含む課税期間中に登録を受けた場合を除く)がある。基準期間の課税売上高が1千万円以下になっても、登録の効力が失われない限り消費税申告が必要になる。
制度開始の令和5年10月1日から登録を受けるには、令和5年9月月30日迄に申請手続きをしなければならない。制度開始日後であっても、免税事業者は登録申請の際に登録希望日(提出日から15日以降の登録を受ける日として事業者が希望する日)を記載することで、希望日から登録を受けることができる。
適格求書保存発行事業者となることの是非に就いてのお客様へのアドバイス
イ.住宅賃貸や社会保険診療等の非課税取引を主に営む法人や個人事業者
課税仕入れが有ったとしても課税売上割合がゼロに近いので殆ど仕入税額控除が受けられません。一方サービス提供の相手方にしても、個人が多いため適格請求書を受取るメリットがありません。態々課税事業者を選択して消費税申告の手間を増やすよりも、免税事業者としての益税メリットを享受する方が得策です。
ロ.その他の中小法人や個人事業者
取引の相手方にすれば適格請求書発行事業者以外からの仕入れに就いては仕入税額控除が受けられないため、取引から除外されることが考えられます。益税メリットより取引喪失のデメリットが大きい場合は、好むと好まざるとに拘わらず課税事業者を選択するしかありません。
2.改正電子取引制度
改正電子帳簿保存法のスタートで、国税関係帳簿や電子取引データーを電磁的記録として保存することが義務付けられました。ところが拙速な導入で実務が追い付かず、電子取引に就いては2年間の経過措置として①システム対応が間に合わぬ等の已むを得ない事情があれば②出力書面での保存が認められています。令和5年度税制改正では、経過措置の期限切れ(令和5年12月末)に伴い本則として以下の猶予措置が講じられました。
電子取引データを相当の理由に因り電磁記録保存が出来なかった事業者については、従前行われていた出力書面の保存に加えデーターのダウンロードの求めに応じることが可能であれば、検索機能の確保等の要件を問わずそのデーター保存が認められます。但し税務調査対象期間の保存が必要です。
電子取引データーの保存
電子取引とは、メール添付資料・WEB送受信データー・FAX・EDI・電子契約など取引情報をデジタルで授受する取引を言います。請求書・領収書・契約書・⾒積書等の電子データを送付・受領した場合は、それを一定の要件に適った形で保存することが必要です。
電子帳簿・電子書類の保存 
会計ソフト等を使用して作成した帳簿書類は印刷せず電子データ―の儘保存することが出来ます。保存には事前の税務署長承認が必要でしたが、事業者の事務負担を軽減するために不要とされました。電子的に作成した国税関係書類の保存に就いても同様の取扱いになります。 複式簿記など最低限の要件を満たす電子帳簿であれば、電磁的記録として認められます。
弊事務所ではお客様各位に弥生会計に依る会計帳簿の作成と保存をお願いしています。弥生会計のVersion20以降は、JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)による電子帳簿保存法の要件認証を取得済みです。従って帳簿書類や国税関係書類をハードコピーの形で保存する必要はありません。因みに幣事務所では、不測のデーター喪失に備えて、お客様の弥生会計データーを全て磁気ディスクに保管させて頂いて居ります。
スキャナー保存
各税法で保存が義務付けられている書類は、紙ではなくスキャナーで読み取った電子データーの形で保存することが認められます。この開始は税務署長への届出の必要がなく任意のタイミングで可能です。スキャナー保存開始前に作成・受領をした書類については、予めその書類等を記載した適用届出書の提出をすることで保存が可能です。

 
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