小規模宅地等の特例に関する法令・通達は複雑かつ難解です。われわれ税理士も判断に迷うことが少なくありません。ところが相続では財産に占める宅地等の割合が大きいので、この適用を間違えると大変なことになります。若し間違えて申告するとどうなるか?今回はこれがテーマです。
間違いのパターンを4類型に分けて検討しましょう。
(1)特例対象宅地等があったにも拘らず、何らかの事情で相続税の期限内申告書に適用を受ける旨の記載と必要書類の添付を行わなかった場合
⇒申告書の提出期限までに当該特例対象宅地等が分割されていることその他の要件を満たしていれば、期限後申告書や修正申告書に必要事項の記載と書類添付をおこなうことで、適用が受けられます。
また申告書の提出がなかったこと或いは記載若しくは添付がなかったことに付き、所轄税務署長が已むを得ない事情があると認めた場合には、適用が受けられる場合もあります。(宥恕規定と言います)
(2)複数の特例対象宅地等があったので、有利な組み合わせを選択して申告したが、当該宅地等が特例の対象にならないことが後日判明した場合
⇒小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、特例対象宅地等の中から、納税者が選択(選択特例対象宅地等と言います)しなければなりません。ところが適用区分を誤った選択は法令に定める要件を欠きますので特例の適用は有りません。従って、改めて選択した選択特例対象宅地等が、限度面積要件その他を満たしていれば、適用を受けることが出来ます。
(3)複数の特例対象宅地等があったので、有利な組み合わせを選択して申告したが、もっと有利な組み合わせがあることに後で気が付いた場合
⇒当初の申告に何等の瑕疵がなかった場合には、適用対象宅地等の選択替えができないこととされていますので、有利な組み合わせに選択替えをしても、更正の請求を行うことは出来ません。
(4)複数の特例対象宅地等があったので、有利な組み合わせを選択して申告したが、その後に他の共同相続人から遺留分の減殺請求があり、特例対象宅地等の取得者に変動があった場合
⇒国税庁の質疑応答事例に拠れば、当初申告に於ける瑕疵はないが、遺留分請求という後発的事由に起因する組合せ変更は選択替えには該当しないので、更正の請求は認められるとの回答になっています。
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