①被相続人は借地上に建物を建て、一親等内の姻族に賃貸している。用途は姻族の事務所で,家賃を授受している。被相続人と一親等内の姻族とは生計が別である。
②被相続人は遺言により建物及び借地権を当該一親等内の姻族(賃借人)に遺贈する。
③当該一親等内の姻族は受贈後、元々の自己の業務に使用する。従って被相続人生存中の建物は被相続人の貸付事業用、受贈後は貸付事業用ではなく姻族の自己業務用となる。
④借地権(貸家建付借地権)の評価は数千万円。
この場合、被相続人の貸付事業の引き継ぎではなく受贈者自らの事業に使用しているので、貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例適用は無理と思われますがご見解をお聞かせ下さい。宜しくお願いします。
文面からして税務関連業務に携わって居られる方が、セカンドオピニオンとして訊いて来られたものと推察します。それはさて置き、税理士でも小規模宅地等の特例の適用可否判定には相当に神経を使います。理由は関係条文や通達が複雑で分かり難いこと、相続税申告業務は課税価格や納税額が大きく判断を間違えると紛議の元になりかねない為です。
それはさて置き個別事案で適用可否の判定を行うに当っては、(ⅰ)特例対象宅地等の要件に該当するかどうか(ⅱ)特定居住用宅地等や貸付事業用宅地等、特定事業用宅地等の要件に合致するかどうかの確認を行います。前者は相続開始の直前に於いて、当該宅地等が被相続人等(被相続人及び被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族を言います)により適用の対象となる用途に供されていたかどうかの確認。後者は当該宅地等を取得した者が適用要件に合致するかどうかの確認です。
(ⅰ)の特例対象宅地等に該当するのは、被相続人等の居住用・貸付事業用・特定事業用の何れかに供されていた場合に限定されますが、設例の条件で該当するのは貸付事業用宅地等だけです。特定事業用宅地等も一見該当するように思えますが、事業を行っていた姻族が被相続人とは別生計であったとのことなので対象外になります。
次に(ⅱ)の貸付事業用宅地等に該当するかどうかですが、該当するのは次の何れかの場合に限られます。
イ.当該親族が、相続開始前から申告期限までの間に当該宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで当該宅地等を有し、かつ当該貸付事業の用に供していること
ロ.当該被相続人の親族が当該被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ、相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の貸付け事業の用に供していること
設例の条件では何れにも該当しません。
従って、この借地権には小規模宅地等の特例が適用されません。
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