相続税の期限内申告書を提出しなかった方から小規模宅地等の特例適用に関するご相談

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1年前に父が亡くなりました。相続財産は、都内にある自宅(地積40坪の古い一戸建て)と3千万円程の預貯金並びに上場株式です。自宅その他、遺産の大部分は母が相続しました。小規模宅地等の特例の適用を受ければ、遺産総額が基礎控除額以下になるので申告はしていません。先日雑誌で、小規模宅地等の特例の適用を受けるには申告が必要との記事を見ました。既に申告期限が過ぎていますがどうすれば良いでしょうか
先般の国税庁発表に拠れば平成30年分の相続税申告数は149千件で、うち33千件が相続税支払いのない申告です。相続税額がないにも関わらず何故申告するのでしょうか。これには次の2つの軽減措置が起因しています。
① 小規模宅地等についての課税価格の計算の特例(措法第69条の4)
② 配偶者に対する相続税額の軽減(相法第19条の2)
これ等の軽減措置は、納税者が申告書を提出し、必要事項の記載と一定の書類を添付しなければ適用がありません。相続税の納付が無い=申告の必要がないとの誤った認識でいると、折角の優遇措置が受けられなくなる場合があります。ご相談者については、速やかな期限後申告書の提出をお薦めします。お母様が自宅を相続されたとのことなので、後述する未分割財産の問題はありません。申告書に適用を受ける旨を記載し、一定の書類を提出すれば期限後申告であっても特例の適用が可能です。

こうした事例が更に増加することが予想されますので、今回は小規模宅地等の特例を中心に、対象宅地等が申告期限までに分割されている場合と、されていない場合とに分けてご説明します。
この適用を受けるには、物件が特例対象宅地等であることに加えて、取得者たる親族が一定の条件に該当する必要があることは皆さん良くご存知です。ところが、この他にも幾つかの重要な条件があります。因みにご相談事例はⅰ)の手続き要件を満たしていません。
ⅰ)特例の適用を受けるための手続き
相続税の申告書(期限後申告書及び修正申告書を含む)に、適用を受ける旨を記載し且つ必要書類を添付しなければならない
ⅱ)共同相続人の同意
特例対象宅地等を取得した個人が2人以上いる場合には、全員の同意が必要となる
ⅲ)対象宅地等の分割
申告書の提出期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内)までに分割されていない宅地等については適用がない。但し、提出期限から3年以内に分割された場合にはこの限りでない。

遺産総額が基礎控除額を超える場合、配偶者の税額軽減の規定の適用がないものとして相続税額の計算を行ない、納付すべき税額があれば申告書を提出する義務があります。この場合の遺産総額とは、小規模宅地等の特例を適用しない場合の金額を言います。従ってご相談のケースでは、相続税の申告書を提出しなければなりません。これに必要事項の記載と一定の書類を添付することに拠り、初めて2つの優遇措置が適用されます。提出期限までに申告書を出さなければ如何なるでしょうか?これは、申告期限までに当該宅地等が分割済みの場合と、未分割の場合とに分けて考える必要があります。

<申告期限までに特例対象宅地等が分割されている場合>
措法第69条の四第7項には、”第1項の規定は、期限内申告書(これに係る期限後申告書及びこれ等の修正申告書を含む)に適用を受ける旨の記載と計算明細書その他必要書類の添付が有る場合に限り適用する”と書かれています。従って期限後申告書であっても必要事項の記載と書類の添付があれば適用は可能です。
また同条第8項に、”税務署長は、相続税の申告書の提出がなかった場合又は第7項の記載や添付が無い申告書の提出があった場合でも、已むを得ない事情が有ると認めるときは、当該記載をした書類及び財務省令で定める書類の提出が有る場合に限り第1項の規定を適用する” と書かれています(宥恕規定)。
従って期限後申告書を提出すれば特例の適用が受けられる可能性が高いと思われます。

<申告期限までに分割されていない場合>
措法第69条の四第4項には、”第1項の規定は、申告期限までに分割されていない特例対象宅地等には適用しない。ただし申告期限から3年以内に分割された場合には、この限りでない”と書かれています。従って一般には、小規模宅地等の特例を適用せずに相続税額を計算した期限内申告書を提出し、併せて「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出します。3年以内に分割されれば、特例を適用して相続税額を再計算し、同条第5項に拠り過大納付税額について更正の請求を行います。
こうした手順を失念した場合ですが、申告期限までに分割見込書を提出していないのだから適用無しとの解説記事を眼にします。然しながら、関係法令を読む限りそうとも言い切れません。失念に気付いた時点で期限後申告書を提出し、併せて” 未分割であることにつき已むを得ない事情がある旨の承認申請書 ”を提出します。そうすれば同条第7項の税務署長の行政判断に係る不確実性は残るものの、適用が認められる余地はあろうかと思います。但しこの承認申請書は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに出さなければなりません。これも徒過した場合は適用が難しくなります。

 
*本稿には一部筆者の私見が含まれています。
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