アパートや駐車場の敷地に小規模宅地等の特例を適用する場合の留意点

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小規模宅地等の特例は、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の他に、事業の用に供されていた宅地等にも適用があります。事業用は貸付事業用と貸付事業用以外の事業用とに区分され、両者で適用要件や評価割合が異なります。これはアパートや駐車場等の不動産貸付けが貸付事業に該当し、かつ規模・設備の状況・営業形態等を問われないため、比較的的簡単に適用要件が整えられることを考慮したものと思われます。今回は、対象となる事例が多いにも拘らず、実務に於いて適用解釈を間違え易い不動産の貸付事業用宅地等への特例適用について留意点をご説明します。

1.特例の適用対象となる貸付事業用宅地等のチエックポイント
(ⅰ)宅地等を取得した被相続人の親族が事業を承継(又は継続)しているか?
貸付事業用宅地等とは、被相続人等の事業(不動産貸付業・駐車場業・自転車駐車場業・準事業を言う)の用に供されていた宅地等で、一定の要件に該当する被相続人の親族が相続又は遺贈により取得したものを言います。
被相続人等とは被相続人及び被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族のことです。従って上記の事業は、”被相続人” 又は ”被相続人と生計を一にする被相続人の親族” の何れかが行っていた事業と言うことになります。
一定の要件に該当する保相続人の親族とは次の①又は②何れかに該当する者を言います。
①当該親族が、相続開始時から申告期限までの間に、当該宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ当該事業の用に供していること
②当該被相続人の親族が被相続人と生計を一にしていた者であって、相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有し、かつ相続開始前から申告期限まで引き続き当該宅地等を自己の貸付事業の用に供していること
①は被相続人が行っていた事業を被相続人の親族が承継することを念頭に書かれています。承継の時期は申告期限までですので、これを過ぎて承継しても適用がないことに留意する必要があります。
②は生計同一親族が相続発生以降も引き続き自己の貸付け事業を継続することを念頭に書かれています。ここで注意が必要なのは相続開始前とありますので、相続の発生前から生計同一親族が自己の貸付事業の用に供していたかどうかを確認しなければなりません。
(ⅱ)宅地等が財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているか?
宅地等が建物又は構築物の敷地として利用されていることが必要です。何もない更地には適用がありません。財務省令で定める建物または構築物とは、耕作又は養畜の用途に使われるものではないと言った程度の意味に過ぎません。
建物については判断に迷うことが有りませんが、問題は構築物です。舗装道路及び舗装路面は構築物に該当しますので、アスファルト舗装をした駐車場であれば貸付事業用宅地等になります。砂利を敷き詰めた駐車場も同様です。これに対し単に線引きをしただけの青空駐車場は更地扱いですので、貸付事業用宅地等にはなりません。
コインパーキング業者に更地で貸付けることがあります。必要な料金メーターの設置や路面舗装を業者が行いますので、これも貸付事業用宅地等に該当します。
(ⅲ)建物や構築物の所有者は誰か?適正な家賃・使用料・地代が継続的に支払われているか?
貸付事業用宅地等の判定に於いて、建物や構築物の所有者が誰かは問われません。被相続人がアパートの所有者であれば当該宅地等は貸家建付地、第三者が宅地等を賃借し家屋を建設しているのであれば貸宅地になりますが、何れも貸付事業用宅地等であることに変わりありません。
ところが、家賃等が無償(使用貸借)となれば話は別です。法人取引と異なり、個人取引では親族間の不動産の使用貸借が日常茶飯事に行われます。税務も容認して居り、これに対して贈与税の認定課税をすることはありません。このバランスで、個人間の不動産使用貸借については、借家権や借地権が生じないとの取扱いになっています。従って適正な家賃等を継続的に収受していない場合は、貸付事業用宅地等として特例の適用を受けることは出来ません

.特定居住用宅地等と併用する場合のチエックポイント
  特定居住用宅地等の面積制限は330㎡、評価割合は20%です。これに対し貸付事業用宅地等の面積制限は200㎡、評価割合は50%に過ぎません。余程路線価に差がない限り、特定居住用宅地等に優先適用するのが有利です。
貸付事業用宅地等は所有するが、居住用宅地等は所有していないと言う方は殆んど居られないと思います。先ず特定居住用宅地等から適用し、余った面積制限範囲内で貸付事業用宅地等に適用すると言った運用が一般的です。そうすると複数の選択特例対象宅地等の組合せが出来ますので、どれが最も有利かシミュレーションが必要になります。
確定申告提出後にもっと有利な組合せが有ることに気付く場合が有ります。実務では充分に有り得ることです。出来れば選択替えをして申告書を再提出し、更正の請求を行いたい処ですが残念ながらこれは認められません。
そうではなく、確定申告後の税務調査で選択特例対象宅地等が要件を満たしていないため否認されることがあります。この場合は、税法の規定に従わず計算したため納付税額が過大になった訳ですから、確定申告後5年以内であれば特例対象宅地等を再選択して更正の請求を行うことが可能です。

 
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