投資信託の分配金受取り時と売却時の会計処理・税務

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公募型投資信託に係る会計処理、とりわけ「定期分配型の投資信託」や「自動継続の再投資型投資信託」の会計処理・税務は、個人事業者であると法人であるとを問わず難解で、会計担当者を悩ませている様です。

今回は、幣事務所の顧問先での事例を参考にして、分かり難いポイントに絞って解説します。

 

1.株式投資信託と公社債投資信託の区分

株式投資信託の収益分配金は配当扱い公社債投資信託の収益分配金は利子扱いです。どちらも20,315%で源泉徴収されますが、課税上の取扱いが全く異なりますので正しく区分する必要が有ります。

専ら伯国レアル建て公社債を対象にした投資信託のケースを取り上げてみましょう。表面金利は高いのですが、金利裁定が働き為替差損が発生したため、トータルでの運用実績は若干のプラスに止まっています。

さてこの投資信託は、公社債投資信託でしょうか、株式投資信託でしょうか?運用表では公社債にのみ投資していますが、商品設計上は株式投資も対象になっています。結論は株式投資信託に該当します。従って収益分配金については、受取配当金の益金不算入計算が必要になります。

 

2.定期分配型投資信託における普通分配金と特別分配金の会計処理・税務

定期分配型投資信託は、運用実績に拘らず定期的に一定額を投資家に分配する商品です。年金の不足を補う目的で利用されることが多く、個人投資家に人気があります。分配時に利益剰余金が残っていれば良いのですが、残っていないケースもあります。

分配原資が剰余金の場合を、普通分配金と呼びます。税務上は利益の配当ですから、分配時に所得税等の源泉徴収(法人15.315%/個人20.315%)が行われます。剰余金が無い場合は元本からの払戻しになりますが、特別分配金と呼びます。当然源泉徴収は行われません。

普通分配金か特別分配金かの見分け方ですが、金融機関から月次に送られてくる分配金明細書に記載されています。源泉徴収税の有無でも判定できます。

投資家は分配金受取りの都度、次の何れかの仕訳が必要になります。

借方 貸方
普通分配金 普通預金 8,469 受取配当金 10,000
仮払金 1,531
特別分配金 普通預金 10,000 投資有価証券 10,000

 

3.再投資型投資信託における普通分配金と再投資の会計処理・税務

再投資型投資信託は、分配金を投資信託に再投資する商品です。当然、再投資の原資は利益剰余金(普通分配金)です。

1万円の剰余金が得られたとしましょう。1531円の源泉徴収差引き後のネット手取り金額は8469円です。これで投資信託を購入する訳ですが、1万口当りの基準価額が11200円だったとします。購入できる口数は、8469×10000/11200=7561口です。再投資前の所有口数を5百万口とすると、再投資後の所有口数は5007561口になります。

再投資時の仕訳は、次の通りです。

借方 貸方
普通分配金 投資有価証券 8,469 受取配当金 10,000
仮払金 1,531

(ご参考)

再投資型投資信託と似て非なるものに、無分配型投信信託という商品があります。文字通り剰余金を分配せず、投資信託の中に留保して再運用します。再投資型は、一旦分配してそれを再投資するので、上記の通り購入時に課税が発生しますが、無分配型は分配しませんので売却時まで課税されることはありません。究極の複利型運用商品です。

ただ無分配型投資信託は、ファンド側に基準価額計算の手間が掛かる為、追加型投資信託としては殆んど販売されて居りません。

 

4.売却時の会計処理・税務 (個別元本とは何か?)

投資家は所有する投資信託の受益権を金融機関に売却(又は解約)し、換金相当額を受取ります。税務上は分離課税の有価証券譲渡所得で、上場株式と同様の取扱いになります。

有価証券の譲渡所得は、収入金額 ー (取得費+譲渡費用)で計算されますが、投資信託において取得費に相当するのが個別元本です。個別元本とは何か?個別元本とは、投資家が追加型投資信託に投資した場合の投資金額(手数料は不含)から特別分配金を控除し、買付分を加算(3の設例では8469円)したものです。個別元本は毎月変動しますので、正確な把握が相当に困難です。金融機関では、投資家毎にシステム処理していますので、最終的にはこれに合わせて譲渡所得を計算すれば良いでしょう。

 
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