上場株式の含み損を利用した、株式配当や公社債利子との損益通算による節税策のご相談

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60台の個人投資家です。このところFRBの利上げや米中貿易摩擦の影響で、投資株式の含み益が急激に減少しています。含み損が出ている銘柄も有りますので、取敢えずこれに就いては年内に売却のうえ買戻し、譲渡損を実現したいと考えています。上場株式の譲渡損は、他の株式譲渡益や配当との損益通算が可能で、かつ相殺し切れない金額は3年間繰越控除できると理解して居りますが、今回の節税策に関して留意点などをアドバイスして頂ければ幸甚です。

 

含み損を節税に利用するためのクロス取引ですが、同一日に同一口座内で行った場合は、売却株式と買戻し株式の平均取得価額で譲渡原価が計算されるため、想定した譲渡損失の50%しか計上できない結果になります。これを避けるには、買戻しを翌日以降にずらすか、或いは別の特定口座で取引をする必要があります。次に上場株式等の譲渡損ですが、上場株式等の譲渡益と損益通算後の金額を上場株式等の配当や特定公社債の利子などから控除することになります。平成27年以前は可能であった上場株式と一般株式の損益通算は現在認められていません。配当等も上場株式等の配当や特定公社債の利子などに限られ、一般株式配当との損益通算は出来ません。更にこれ等の配当等については申告分離課税を選択していることが必要で、総合課税を選択している場合は対象外になります。因みに上場株式の配当に係る課税方式の選択は、総合課税か申告分離課税かの二者択一で、一部を総合課税、残りを申告分離課税とすることはできません。

株式投資で勝ち負けは付き物です。然しながら勝ち負けが泣き別れになり、余分な税負担が生じるのは避ける必要があります。具体的には売却益が出た年分の翌年以降に売却損が出るケースです。証券税制には繰越控除はあっても還付制度がないため、税引き前がトントンでも税引後では損をします
これを回避する目的で、年末近くになって含み損のある銘柄をクロス取引することが有ります。上記Ans通りの取扱いになっていますが、これは税務当局の指導ではなく証券会社側のシステムロジックに起因するものです。
国内上場株式間の損益通算は皆さん良くご存知ですが、上場株式等には外国金融市場において売買されている株式・公募株式投資信託の受益証券・国債及び地方債並びに公募公社債などが含まれることは存外に知られていません。これ等も損益通算の対象になりますので御留意下さい。但し外国証券会社の海外口座で上場株式等の譲渡損失が生じた場合は注意が必要です。租税特別措置法第37条の12の2①項の規定が適用されるのは、同②項一号から十二号に定める上場株式等の譲渡に因り生じた譲渡損失に限られています。外国証券会社は金融商品取引法第二条第九項に規定する金融商品取引業者には該当せず、またこれに対する売委託は特定の信託会社を通じた取引に限定されています。

上場株式等の譲渡損失との損益通算が認められる上場株式等の配当所得等の範囲ですが、上場株式等の配当や証券投資信託の収益分配金の他に、公社債の利子が含まれます。所得区分が配当所得ではなく利子所得になっているため、損益通算の対象外と勘違いされる方が多い様です。勿論、申告分離課税を選択していることが必要になります。

最後に上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除制度に付いてです。この適用を受けるためには以下の手続きが必要で、失念すると適用が受けられなくなります。
ⅰ)上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年に、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出すること
ⅱ)その後連続して「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」の添付がある確定申告書を提出すること
  (注) 上場株式等の譲渡がなかった年も申告が必要です。
ⅲ)この繰越控除を受けた年に、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表)」及び「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の添付がある確定申告書を提出すること。

 
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