永年勤続表彰で貰った金地金の譲渡所得に係る確定申告のご相談

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5年ほど前になりますが、早期定年退職を選択した際に永年勤続者表彰の記念品として約70グラムの金地金を勤務先から支給されました。このところ金融不安により金価格が高騰しておりますので売却したいと思います。この場合、売却益については確定申告が必要でしょうか。因みに現在の収入は再就職による僅かな給与と公的年金の受給のみです。
結論から申し上げますと、金地金の売却益に就いては特別控除額以下のため確定申告をする必要はありません。但し貴方の場合は、給与所得及び退職所得以外の所得(この場合は公的年金等の雑所得)が20万円を超えていますので、確定申告そのものは必要になります。

金地金の売却益ですが、所得区分は総合課税が適用される譲渡所得になります。営利目的で頻繁に売買を繰り返していれば事業所得や雑所得として扱われることもありますが、題意から考え難いと思います。譲渡年の1月1日における所有期間が5年以内か5年超かで、短期譲渡所得か長期譲渡所得かに区分されますが、今回のケースは仮に5年超とします。
総合課税の長期譲渡所得金額は、{譲渡金額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除50万円}の計算式で求められ、この内2分の1が総所得金額に算入されます。問題は無償で得た金地金の取得費を幾らと考えるかです。
永年勤続者に支給する記念品については、イ)勤続年数や地位に照らして相当であること、ロ)勤続年数が概ね10年以上であること、ハ)前回表彰から5年以上経過していることを条件に給与課税しないことになっています。但し記念品であっても、金銭等価物として市場への売却や換金ができるものは課税扱いになります。このケースでは、記念品の時価相当額に拠り源泉徴収が行われているものと推測されます。時価は過去の取引相場(消費税込の小売価格)を参照して調べることが出来ますが、恐らく@グラム1500円程度と推測されます。現在の相場が@4900円程度ですから、70グラムだと売却益は25万円前後でしょう。特別控除50万円以下ですので、総所得金額への加算はありません。

ご参考までにその他の金関連取引に係る税務の取り扱いをご説明します。
先ず金投資口座です。商品の性格上、常に先物価格が現物価格よりも高いことを利用した確定利付の金融類似商品です。銀行扱いのものは金投資口座、証券会社では金貯蓄口座と呼ばれています。一定期間経過後の買戻し価格を予め決めておき、金の現物を販売します。購入した金は保護預りのため現物を受け取ることは出来ません。預り証または証券が発行されます。先物予約販売なので、原則として中途解約が出来ません。また金地金は貨幣ではないので消費税が掛かります。購入価格・売戻し価格とも通常税込みで取引されます。
利益が金利相当の金融類似商品なので、一律20%の源泉分離課税が適用されます。

次に、純金積立です。毎月定額買付または定量買付の積立金額を決めておき、金融機関の口座から引落としてその代金をドルコスト平均法で金地金の買付に当てる仕組みです。常にドルコスト平均法で買付けるのではなく、高騰時には中断、下落時にはスポット買い増しも可能です。投資家が積み立てた金は消費預託か特定保管の何れかで運用若しくは保管されています。特定保管は、取引会社資産と分別管理されますので、信託財産と同様に万一の場合安全ですが、運用が出来ないのでその分利回りは低くなります。金価格上昇時には取引会社に売却して利益を確定するとか、金地金として引き出す或いは金貨や宝飾品と交換することも可能です。
金投資口座と違い、金と言う商品そのものの売買ですから総合課税の譲渡所得扱いとなります。当然利益が出る保証はなく損失の場合もありますが、貴金属は通常生活に必要でない資産として、給与所得などその他区分の所得との損益通算は認められません。

 
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