上場株式等の売買損益を確定申告すると国民健康保険料との兼合いで不利になる場合がある

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厚生労働省は2018年度から国民健康保険料の負担上限額を4万円引上げ、77万円にすることを決定しました。国保加入者については、上場株式等の配当や売買損益を確定申告すると保険料が増えることがありますので、税負担減と保険料負担増の得失を比較検証して、確定申告をするかしないかを決める必要があります。今回はこのうち上場株式等の売買損益の確定申告について説明します。配当に関しては別稿の「上場株式配当の総合課税による確定申告に付いてのご相談」をご参照下さい。

国民健康保険料(所得割)の算定基礎額となる総所得金額には、株式等の譲渡所得金額が含まれます。ところが妙なことに、特定口座(源泉徴収あり)内の上場株式等の譲渡所得であれば算定基礎額から除外されますが、これを確定申告した場合は算定基礎額に加算されるため保険料負担が増えることになります。理由は単純な話で、特定口座(源泉徴収あり)は源泉徴収のみで課税関係が終了するので(確定申告は不要)、市区町村では算定基礎額たるべき上場株式等の譲渡所得金額が把握出来ません。一方確定申告をした場合には、これが把握出来るためです。

確定申告に因り損得が分れる具体的な事例を考えて見ましょう。

A特定口座の差引き譲渡所得金額が50万円、B特定口座の差引き譲渡所得金額が▲40万円とします。口座間の損益通算のため確定申告をすると、所得税・住民税合わせて8万円(40万円X源泉徴収税率20%)の還付金が受けられます。他方、AB損益通算後の譲渡所得金額に対して、大凡1万円(10万円X標準保険料率10%)の国民健康保険料と介護保険料の負担増が発生しますので、トータルでの確定申告メリットは7万円になります。
A特定口座の差引き譲渡所得金額が100万円、B特定口座の譲渡損失金額が▲20万円とします。還付金は4万円(20万円X20%)、対して保険料の負担増は8万円(80万円X10%)ですから確定申告をすると逆に4万円の損になります。
同様の事象は、上場株式等に係る譲渡損失の3年間繰越控除のために確定申告を行った場合にも発生します。仕組みは全く同じです。
それでは確定申告書に損益通算をする金額のみ記載して、その他は確定申告なしにすれば良いのではとお考えかも知れませんが、そう上手くは行きません。実際に確定申告書様式と証券会社から送られてくる特定口座年間取引報告書を見れば直ぐに分ります。確定申告書には源泉口座毎の年間取引合計額を記載する必要があり、特定口座年間取引報告書には年間取引合計額が一括表示されています。このため損益通算部分以外の譲渡所得についても市区町村で把握できる訳です。

どうすれば必要な損益通算を行い、且つ通算部分以外の譲渡所得に対する保険料負担を回避できるのでしょうか?それには先ず同一の特定口座内で損益通算を完結させ、複数の口座間での損益通算が不必要となる様に、株式含み損益具現化のタイミングを計ることです。次に前年からの譲渡損失の繰越控除については、その年分の控除に必要な譲渡利益のみを出すに止め、その他の含み益については翌年以降に実現を繰り延べることです。これは繰越控除後の譲渡所得金額がその年分の国民健康保険料の算定基礎額となるためです。

 

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