1.米国の所得税
米国でのキャピタルゲイン課税ですが、短期(1年以下の保有)と長期(1年超の保有)毎にキャピタルゲインとキャピタルロスを通算します。その後に短期と長期を通算してネットキャピタルゲイン(ネットキャピタルロス)を算出します。
ネットキャピタルゲインが短期キャピタルゲインの場合は、他の所得と合算して通常の累進税率に拠り税額を計算します。ネットキャピタルゲインが長期キャピタルゲインの場合は優遇税率(0~20%の連邦税と、所定の州・地方政府税)を適用して税額を計算します。日本で課税された場合は、二重課税排除のため米国側で外国税額控除が適用されるのですが、日米租税条約で株式譲渡益は原則非課税になっているので難しいと思います。
ネットキャピタルロスが生じた場合は、年3千ドル(夫婦別申告は1.5千ドル)を限度に給与所得その他の通常所得から控除できます。控除しきれない金額は翌年以降に繰り越せます。
2.日本の所得税
日本での非居住者に対する株式譲渡所得課税(分離課税)ですが、恒久的施設P/Eを有しない非居住者が株式を譲渡したとき、次の①から➄に該当する場合は15.315%の税率に拠る所得税の源泉徴収で課税が完了します。⑥に該当する場合は総合課税の対象として確定申告が必要です。これ等の何れにも該当しない場合は、課税の対象外です。
なお日米租税条約では、不動産化体株式の譲渡と短期滞在期間中の譲渡所得課税について別段の規定を設けていますが、本稿での申告要否の判断からは割愛します。
①内国法人の株券等の買集めをし、これをその内国法人等に対し売却することによる所得
②内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行う、その内国法人の株式等の譲渡による所得(一定の要件に該当するものに限る)
③税制適格ストック・オプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得
④特定の不動産関連法人の株式の譲渡による所得
⑤
3.証券会社への必要手続き並びに所得税及び住民税の還付申告の可否
出国により非居住者となった場合は、証券会社に対して特定口座廃止届出書を提出したものと見做され特定口座は廃止されます。出国日までに特定口座廃止届出書を提出し、且つ特定口座継続適用届出書を提出すれば特定口座内株式は一般口座に移管され、取引が可能になります。この場合は源泉徴収が行われず、譲渡損益も自分で計算するしかありません。
(注)非居住者の証券口座維持を認めるかどうかは、証券会社により異なります。特定口座を含む全ての口座廃止が必要な証券会社、国内株式や個人向け国債に限定して一般口座での保管のみ認める証券会社、出国時に預かった国内株式と個人向け国債の売却のみ認める証券会社(言わずもがな新規の買付は禁止です)など様々ですので、ご自身で取引証券会社に確認する必要が有ります。
ご相談者のケースは法定ルールを失念し居住者として売買取引を行った訳ですが、この事後処理は証券会社毎に多少異なるものと思われます。何れにせよ、市区町村からの国外転出に係る住民票除票の取得と、証券会社が翌年1月に発行する特定口座に係る年間取引報告書の提出が不可欠です。年間取引報告書には年間の譲渡損益金額と源泉徴収税額が一括記載されているため、出国記録等を基に居住者中の取引と非居住者中の取引を正確に区分計算する必要があり煩瑣です。
非居住者本人が納税管理人を立て還付を受けるための確定申告を行うことが考えられますが、源泉徴収税額の過誤納に拠る還付請求は源泉徴収義務者から所轄する税務署又は都道府県税事務所宛てのものに制限されているため注意が必要です。多くの証券会社は非居住者の税務処理対応には関与しないと断っているため、中々一筋縄では行きません。
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