米国の居住者が日本の源泉徴収有り特定口座で株式を譲渡した場合の日米の所得税申告に関するご質問

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5月から海外転勤で米国に居住しています。このところの世界的株高で、日本のネット証券会社に保有する源泉徴収有り特定口座で上場株式を譲渡し相応の利益を得ました。これに関して米国と日本での所得税申告の要否につきご教示をお願いします。因みに先生の記事に拠れば、非居住者の日本での上場株式譲渡益は非課税とのことなので、必要のない税金を徴収されている様に思います。還付が受けられるのであればご支援をお願い出来ませんでしょうか?

 

米国市民及び米国居住者は全世界課税ですので、日本での株式譲渡利益はキャピタルゲインとして米国で所得税申告をする必要があります。一方日本での所得税申告ですが、一定の要件に該当する場合にのみ、15.315%の税率による源泉分離課税または総合課税の対象としての確定申告が必要になります。これ以外は課税の対象になりません。ところが貴方の場合は出国時に必要な特定口座廃止届を証券会社に提出していないため、居住者として譲渡益の20.315%相当の所得税及び住民税が源泉徴収されています。この還付を受けるには源泉徴収義務者である証券会社に対して住民票除票ほか必要書類を提出し、これ経由で証券会社を管轄する税務署及び都道府県税事務所から返金を受けることになります。また株式の保有金額次第では、国外転出時課税制度が適用される場合があります。

1.米国の所得税
米国でのキャピタルゲイン課税ですが、短期(1年以下の保有)と長期(1年超の保有)毎にキャピタルゲインとキャピタルロスを通算します。その後に短期と長期を通算してネットキャピタルゲイン(ネットキャピタルロス)を算出します。
ネットキャピタルゲインが短期キャピタルゲインの場合は、他の所得と合算して通常の累進税率に拠り税額を計算します。ネットキャピタルゲインが長期キャピタルゲインの場合は優遇税率(0~20%の連邦税と、所定の州・地方政府税)を適用して税額を計算します。日本で課税された場合は、二重課税排除のため米国側で外国税額控除が適用されるのですが、日米租税条約で株式譲渡益は原則非課税になっているので難しいと思います。
ネットキャピタルロスが生じた場合は、年3千ドル(夫婦別申告は1.5千ドル)を限度に給与所得その他の通常所得から控除できます。控除しきれない金額は翌年以降に繰り越せます。

2.日本の所得税
日本での非居住者に対する株式譲渡所得課税(分離課税)ですが、恒久的施設P/Eを有しない非居住者が株式を譲渡したとき、次の①から➄に該当する場合は15.315%の税率に拠る所得税の源泉徴収で課税が完了します。⑥に該当する場合は総合課税の対象として確定申告が必要です。これ等の何れにも該当しない場合は、課税の対象外です。
なお日米租税条約では、不動産化体株式の譲渡と短期滞在期間中の譲渡所得課税について別段の規定を設けていますが、本稿での申告要否の判断からは割愛します。
①内国法人の株券等の買集めをし、これをその内国法人等に対し売却することによる所得
②内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行う、その内国法人の株式等の譲渡による所得(一定の要件に該当するものに限る)
③税制適格ストック・オプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得
④特定の不動産関連法人の株式の譲渡による所得
➄日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得
⑥日本国内に在るゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得

3.証券会社への必要手続き並びに所得税及び住民税の還付申告の可否
出国により非居住者となった場合は、証券会社に対して特定口座廃止届出書を提出したものと見做され特定口座は廃止されます。出国日までに特定口座廃止届出書を提出し、且つ特定口座継続適用届出書を提出すれば特定口座内株式は一般口座に移管され、売買が可能になります。この場合は源泉徴収が行われず、売買損益も自分で計算するしかありません。
ご相談者のケースは法定ルールを失念し居住者として売買取引を行った訳ですが、この事後処理は証券会社毎に多少異なるものと思われます。何れにせよ、市区町村からの国外転出に係る住民票除票の取得と、証券会社が翌年1月に発行する特定口座に係る年間取引報告書の提出が不可欠です。年間取引報告書には年間の譲渡損益金額と源泉徴収税額が一括記載されているため、出国記録等を基に居住者中の取引と非居住者中の取引を正確に区分計算する必要があり煩瑣です。
非居住者本人が納税管理人を立て還付を受けるための確定申告を行うことが考えられますが、源泉徴収税額の過誤納に拠る還付請求は源泉徴収義務者から所轄する税務署又は都道府県税事務所宛てのものに制限されているため認められない様です。何か釈然としませんが。

 
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