不動産賃貸の会計・税務 - 基礎編 -

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1.所得区分

アパートやマンション・駐車場等の賃貸に係る所得税の税務申告は、不動産所得として申告します。下宿やホテルの様に食事を供する場合は、事業所得或いは雑所得になりますが、基本は不動産所得です。
土地の賃貸のうち、借地権や地役権の設定の対価が、土地の時価の2分1を超えるものは、不動産所得ではなく譲渡所得になります。

2.不動産所得の金額

総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額 となります。

総収入金額には、通常の家賃や地代のほか、権利金、名義書換え料、更新料、礼金、共益費、水光熱費の負担金、など不動産貸付に伴う収入が含まれます。
必要経費には、賃貸不動産に係る固定資産税や都市計画税、消費税や事業税などの租税公課、人件費や水光熱費その他の管理費、修繕費、損害保険料、減価償却費、借入金利子などが該当します。但し、これ等に該当しても、家事上の経費については除外しなければなりません。

3.収入や経費の計上時期

家賃などで支払日が定められているものは、未収であってもその支払日に計上しなければなりません。支払日が定められていない場合は、請求した日又は支払いを受けた日に計上します。
礼金・権利金・名義書換え料・更新料は、物件の引渡し時に計上しますが、契約の効力発生日に計上しても差し支えありません。敷金や保証金のうち、返還を要するものは収入に計上しません。返還を要しないものは返還を要しないこととなった日に収入に計上します。

必要経費の参入時期ですが、支払うべき債務が確定した日に計上します。債務の確定とは、①費用に対し支払わねばならない債務が成立していること、②債務の元となる事実が発生していること、③12月31日までに債務の金額を合理的に算出できること、の全てが該当する場合をいいます。但し、減価償却費や各種の引当金等については、別途税法に定めがあります。

4.青色申告

ⅰ)青色申告の要件
税務署長に青色申告の承認申請書を提出し承認を得ると、各種の特典が受けられます。そのためには、法定の帳簿書類を備え付けて取引を記録し、かつ一定期間保存することが求められます。確定申告書に貸借対照表の添付がないと、正規の簿記の原則に従い取引を記録していないものとして取り扱われます。

ⅱ)青色申告の特典
①青色申告特別控除
不動産貸し付けが、事業的規模であれば65万円、それ以外は10万円の青色申告特別控除が受けられます。白色申告には、特別控除がありません。
②専従者給与
生計を一にする配偶者その他親族に払う給料は必要経費に算入することが出来ません。但し、15歳以上の親族がその事業に専従し、給与支払がなされる場合は一定額が必要経費に算入されます。
青色申告者の場合は、支払う給与の金額が適正であれば青色事業専従者給与として全額必要経費に算入されます。白色申告者の場合は、専従者1人につき50万円(配偶者は86万円)までの金額が専従者給与として必要経費に算入されます。何れも不動産貸し付けが、事業的規模であることが必要です。
③純損失の繰越し又は繰戻し還付
不動産所得に起因して生じた純損失については、翌年以降3年間の繰越控除又は前年分所得に対する税金から還付が受けられます。白色申告者には適用がありません。
④特別償却
(サービス付き)高齢者向け優良賃貸住宅や中心市街地優良賃貸住宅の割増償却などの特別償却を受けることが出来ます。

5.事業的規模の不動産貸付

不動産貸し付けが、事業的規模であるかどうかは、建物の貸付の場合ですと一般に5棟10室基準(基通26-9)で判定します。
土地の貸付については、1室の貸付に相当する駐車場の貸付を件数が概ね5として、5棟10室基準により判定するのが一般的です。

事業的規模であるかどうかに因る税務の取扱いは、上記4ⅱ①及び②のほかに次の2点で異なります。、
イ.賃貸用固定資産の取壊し、除却などの資産損失については、事業的規模の場合は、その全額を必要経費に算入しますが、それ以外の場合は、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されます。
ロ.賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、事業的規模の場合は、回収不能となった年分の必要経費に算入しますが、それ以外の場合は、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直します。

 
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