借地権付き建物を譲渡された方から確定申告のご相談

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都心の賃貸ビルを1億5千万円で売却しました。15年前に不動産競売で落札したもので、価格は9千万円でした。借地権付き建物なので買主意向により底地権との連動契約になっており、何れかが契約不成立になった場合は双方共に白紙解除となる条件ですが、無事に引渡しも完了しました。この際に地主へ、未払更新料及び地代差額ほかとして2千万円を支払っています。テナントは全て退去済みで、立退料等の負担はありません。

 

保有期間が5年超なので課税長期譲渡所得(分離課税)となりますが、所得金額は{譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除額}の計算式で求められます。居住用財産や収用等に拠る譲渡ではないので、特別控除額はありません。不動産売買契約書に借地権(賃借権)付き建物と明記されていますので、取得費を借地権と建物に区分して計算する必要があります。後者については事業用建物としての減価償却費相当額を建物取得価額から控除しなければなりません。ところが不動産競売で取得されたとのことですので、両者の区分は分らない筈です。この場合の一般的な計算方法は下記に解説しておきましたが、貴方の場合は不動産所得に係る確定申告書を提出されているので、収支内訳書添付の”減価償却費の計算”に記載された金額が建物の取得費になります。9千万円から当初の建物取得価額を差引いた金額が借地権の取得費です。
次に譲渡費用です。借地権の譲渡では、多くの場合に地主への承諾料支払いが行われます。地上権と異なり賃借権に就いては地主の承諾を得る必要がありますので、承諾料支払は不可欠です。地主からの請求書に、未払更新料・地代差額・遅延損害金相当額と記載されていますが、実質は承諾料に他なりませんので、全額が譲渡費用に該当します。これ等の費用請求に対しては此れまで支払同意をしておらず、不動産所得の経費に算入した事実がないことを念のため確認しました。

一括取得した土地・建物を譲渡した場合の取得費の計算ですが、契約書の内容や消費税計算から分からないときは、購入価額の総額を購入時の夫々の時価で合理的に按分して計算します。固定資産税評価額の比率で按分したり、建物の標準的な建築価額表を用いるのが一般的で、収支内訳書の減価償却費計算もその様にして算出されたものと了解します。なお建物の償却費相当額ですが、業務用の場合は事業所得や不動産所得の計算上必要経費に算入される償却費の累計額となりますので御留意下さい。
借地契約の期間更新(例えば20年)に伴い支払った更新料が有る場合、施行令182条の規定に拠り支払済み権利金の一部が必要経費に算入されますが、本事例については該当する事実関係がありません。

譲渡費用ですが、今回地主に支払った未払更新料や未払地代差額がこれに該当するかどうかです。借地権を譲渡するときに地主の承諾をもらうため支払った名義書換料などが譲渡費用になり、資産の維持・管理のために掛った費用は譲渡費用にならないのが原則です。更新料は借地権の取得価額を構成し、地代は不動産所得の必要経費になるのが原則的取扱いですが、これらについては地主からの要求に同意して来ませんでした。今回借地権と底地権の連動契約を成立させるため、実質的な承諾料として地主に支払うものなので請求名目に拘らず譲渡費用になります。
(お断り)
本記事中には、一部筆者主観に基づくものが含まれていますのでご了解下さい。

 
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