古家を取壊してその跡に新しく建物を建設する場合の解体費と資産損失ですが、次の様にケースに応じて取扱いが異なります。
第三者から古家付土地を購入し概ね1年以内にその古家の取壊しに着手するなど、当初から取壊して土地を利用することが明らかな場合には、建物の取得に要した金額と取壊し費用の額の合計額を土地の取得費に算入しなければなりません(基本通達38-1)。
これに対しご質問の様に、自ら所有する土地の上に建つ貸付用建物を取壊して新たに建築する場合は、取壊し費用と資産損失が不動産所得上の必要経費になります。仮に貸付用建物ではなく非業務用建物を新築した場合であっても同様の取扱いになります。
建替えではなく古屋を取壊して更地で売却する場合ですと、不動産譲渡所得上の必要経費になります。
不動産の貸付けが事業として行われているか、そうでないかに拠っても取扱いが異なります。貸付が事業として行われているかどうかの判断は、特段の事情がない限りいわゆる5棟10室基準(基本通達26-9)に拠ることになります。
貸付が事業として行われている場合ですが、資産損失の全額が取壊しに因り損失が生じた年分の必要経費に算入されます(所法第51条①)。これに対し、事業として行われていない場合には、損失が生じた年分の不動産所得の金額(資産損失の必要経費算入前の金額)を限度として資産損失の金額が必要経費に算入されることになります(所法第51条④)。取壊し費用についてはこの様な規定が有りませんので、何れの場合でも全額が必要経費に算入されます。
この他に事業的規模の場合は、立替中の年に於ける青色申告特別控除及び青色事業専従者給与の取扱いに留意する必要があります。
青色申告特別控除は、当該業務が事業的規模で行われているかどうかにより65万円と10万円の控除に分かれます。年の中途で事業的規模要件を充たさなくなった場合ですが、1年を通じて要件を充たした場合と同様にmax65万円の特別控除の適用が認められます。期間按分の必要はありません
青色事業専従者給与は、事業を営む者と生計を一にする親族がその事業に専従し給与の支払いがなされる場合に、一定の要件を充たせば事業専従者控除が受けらる制度です。一定の要件の一つに ”その年を通じて6か月を超える期間、納税者の経営する事業に専ら従事していること” がありますが、年の中途の休業等に因り事業が年を通じて営まれなかった場合には、従事可能期間の過半で従事していれば青色事業専従者に該当するとの取扱いになっています。但し事業的規模に達していない期間に限っては、青色事業専従者給与の支払いが出来なくなります。(筆者私見)
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