名義預金による相続税対策は税務調査で否認されるリスクが大きい

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相続財産リストの作成で税理士が最も気を使うのが、現預金と株式その他の金融商品です。

理由は、税務調査で申告漏れとして指摘される相続財産のうち約6割が現預金と金融商品だからです。素人でも簡単に把握できるし、評価の手間も掛らないのに何故と思われるかも知れませんが、簡単であるが故に厄介なのです。税理士のアドバイスに依頼者が納得せず、対応に苦慮することも少なくありません。

 

名義預金とは、配偶者や子・孫などの名義で預金されているが、実質的には被相続人の預金(相続財産)と認定されるものを言います。株式その他の金融商品についても同様です。税務調査では、本人名義に止まらず、相続人やその他親族の預金通帳の提出が求められます。通常は3年分です。一方で当局は、申告書に記載された金融機関から反面調査資料を取り付け、事前に相続人等への資金移動状況をチエックしています。或る意味では、相続人以上に情報を持っていると言っても過言ではありません。
(注)H28年からマイナンバー制度が実施されました。金融商品への適用ですが、H30年から口座への付番(但し預金者の任意)が始まり、H33年からはこれが義務化されました。預金・株式など全て炙り出されます。

もし専業主婦や年少の子・孫名義の多額の預金があれば、必ずその資金の出所を問われます。正直に、”これは被相続人が、遺族の生計維持のため、生前に作って呉れた預金です” と説明すれば、”それでは贈与契約書と贈与税申告書を見せて頂けますか?” と来るでしょう。”私名義の預金なのだから、貴方に非難がましく言われる筋合いはない” と感情的に反発しても、単に調査官の心証を悪くするだけのことです。専業主婦であれば、”>家計をやりくりして貯めたお金を、私名義の預金にしたものです” と説明される方も居られるでしょう。残念ながら、この主張も通りません。相続財産になります。

これ等の取扱いは当局が意地悪をしているからではなく、法律的根拠が有るからです。

民法第755条(夫婦の財産関係)

夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。

民法第762条(夫婦間における財産の帰属)

夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう)とする。

 

それではどの様な事実関係があれば、名義人本来の預金として認められるのでしょうか? 一般には次の様なケースがこれに該当します。

ⅰ)私の親が亡くなった時に相続した財産である。

ⅱ)私がお勤めをしていた時に貯蓄した財産である。

ⅲ)夫(被相続人)から生前贈与を受けた財産で、贈与税の申告手続きも適正に行っている。或いは非課税限度額以下であった。

 

相続財産リストは、知りうる限りの情報と資料を税理士と共有して作成するのが最も得策であると考えます。事実関係をブラインドにして、或いは自分の見解を押し通しても、結局相手にしなければならないのは国税>調査官ですから。

最後に、名義預金の申告漏れに伴い起訴された事件をご紹介します。平成26年1月神戸地裁において、刑事訴追された納税者は、”自分に不正行為の意志はなく、申告漏れの原因は税理士から名義預金についての事前説明がなかったため” と主張した事例が有りました。本来信頼関係に立つべき依頼者と税理士の間で、この様な低次元の争いが起きたことは遺憾の極みです。

 
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