不動産等による物納と相続財産の処分による現金納付とではどちらが有利かとのご質問

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都内に自宅兼アパートを所有する母が亡くなりました。自宅とアパートは別棟ですが、同じ敷地内に建っています。敷地面積は約160坪有ります。一人娘で別に所帯を持っていますので、住む積もりはありません。かなりの相続税になりそうなので物納も考えていますが、アドバイスをお願いします。
相続税は金銭で納付しなければなりません。一時に納付することが困難な場合には延納制度がありますが、何れにせよ金銭による納付です。
ところが主要な相続財産が不動産の場合、10ヶ月以内に多額の金銭を用意するのはそう簡単ではありません。そこで生命保険金の活用をお薦めする訳ですが、今回はこれがテーマではないので話を戻します。

先ず物納の有利・不利を判断する上で、最低限知って置かなければならない税務上のルールを幾つか整理して置きましょう。

①担保権が設定されている不動産や、隣地との境界が明らかでない土地は、物納の対象になりません。古家なども同様で、通常は更地での引渡しを求められます。
②収納価額は、原則として相続税評価額(路線価)に拠ります。
③物納については不動産の譲渡所得課税が有りませんが、相続財産を売却して納税資金に当てる場合には譲渡所得課税が有ります。所得金額の計算の基となる取得費は、被相続人のそれを引き継ぎますが、分からない場合には概算取得費(売却代金の5%)が適用されます。
④不動産の長期譲渡所得は分離課税で、税率は20%になります。

次に、3つのケースに分類して有利・不利の判断基準を纏めて見ましょう。

<ケース1>
時間的制約があるため、足元を見られて希望価格では売れないことが考えられます。もし相続税評価額以下でしか売れない様でしたら、躊躇なく物納した方が得策です。
<ケース2>
つい最近別件で、平成25年度の商業地地価公示価格(国土交通省が公表する時価)と路線価を比較調査して見ました。結果殆どの地点では0.7〜0.8のレインジに収まっています。もし路線価の25%増し以上で売れる様でしたら、売却が有利になる可能性が有ります。
下記設例では、被相続人の取得費は不明とし、且つ相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(措置法39)を考慮していませんので、実際には長期譲渡所得税が少なくて済みます。
(設例)
イ.納付すべき相続税 1億円。 物納対象土地の相続税評価額 1億円。
ロ.売却予定価額 1.25億円。  被相続人の取得費は不明。 仲介手数料 3%
ハ.譲渡所得金額:1.25億円×(1ー0.05ー0.03)ー相続税額 =1.15億円ーα
二.長期譲渡所得税額:1.15億円×0.2=0.23億円ーα

<ケース3>
これ以外のケースでは一概に判断できません。上記の要領で、個別に有利・不利の比較計算を行う必要が有ります。

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