自宅売却で3千万円特別控除を使うと買換え資産の住宅ローン特別控除が受けられなくなります

Print Friendly, PDF & Email

自宅マンションを売却して利益が出たが、3千万円特別控除(所得控除)を使えば税負担はなし。この売却代金と住宅ローンでワンランク上のタワーマンションに買替え、10年間の住宅ローン特別控除(税額控除)を受ければ究極の節税プランになるとお考えの方が居られるかも知れません。ところがそう上手くは行きません。3千万円特別控除と住宅ローン特別控除を併用した確定申告書を提出すると税務署から呼び出しが掛かります。何故でしょうか?

住宅ローン控除に関しては、以下の「居住用財産の譲渡所得の特例」との重複適用が認められていません。
(1)住宅ローン特別控除との併用が制限される特例
①居住用財産の長期譲渡の場合の軽課税率
②居住用財産の譲渡に係る3千万円特別控除
③特定居住用財産の買換え特例
④その他
(2)制限の内容
イ.個人が居住用家屋の新築等や増改築等をして、居住の用に供した年分・居住年の前年分・居住年の前々年分の所得税について(1)の何れかの特例を適用している場合は、居住年以降10年間の各年分について住宅ローン特別控除が適用できない。(措置法第41条20項)
ロ.新規住宅を居住の用に供した年の翌年または翌々年中に、その新築等や増改築等をした居住用家屋以外の資産(居住用財産等に限る)を譲渡して、当該譲渡に就き(1)の何れかの特例を適用する場合は、その居住年以降10年間の各年分について住宅ローン特別控除が適用できない。(措置法第41条21項)
ハ.新規住宅を居住の用に供した年から3年目の年中に、その新築等や増改築等をした居住用家屋以外の資産の譲渡(従前住宅等の譲渡)をして、当該譲渡に就き(1)の何れかの特例を適用する場合は、その居住年以降10年間の各年分について住宅ローン特別控除が適用できない。(令和2年度税制改正)
(3)具体例
平成28年中に新しい居住用マンションに買い替える。それまで住んでいたマンションは、平成26年・平成27年・平成28年・平成29年・平成30年の何れかの年に売却して、3千万円特別控除の適用を受けることにする。この場合に、住宅ローン控除はどうなるか?(2)に記載の通り、平成28年~平成37年の各年分については、住宅ローン特別控除が適用出来ない。もし平成30年に売却して3千万円控除の適用を受けるならば、確定申告済みの平成28年分と平成29年分の住宅ローン控除については修正申告をして返金する必要がある。(措置法第41条の3)
平成25年以前若しくは平成31年以降に売却するとどうなるか?売却の前後5年間を外しているので大丈夫そうに見えるが、そもそも3千万円特別控除の適用を受けるには、”居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡”しなければならないとの条件がある。従って事実上併用が出来ないことになる。
(4)対策
3千万円特別控除(プラス軽課税率)か住宅ローン特別控除の何れかしか適用できませんので、両者の税負担額を試算して有利な方を選択する必要があります。

質問や相談をご希望の方は、ホームの「ご質問/お問い合せ」をご利用下さい。ビデオ通話での打合せも可能です。
申告その他の実務をご希望の方は、ホームの「料金のご案内」をご参照下さいます様お願い申し上げます。

関連記事: