住宅ローン特別控除の適用を受けていた自宅の譲渡に係る3千万円特別控除についてのご相談

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45歳のサラリーマンです。子供達の成長に合せてもう少し広いマンションへの買換えを検討中です。現在の自宅は7年前に購入したもので、取得以降継続して住宅ローン控除の適用を受けています。買換えに伴い1千万円程度の売却益が出る見込みですが、3千万円特別控除を使えば税負担はないと理解しています。但しその場合は、前年分と前々年分の所得税で適用を受けた住宅リーン控除の修正申告をしなければならないと聞きました。加えて買換え物件に係る新規の住宅ローン控除も受けられないそうです。果たして3千万円特別控除の適用を受けた方が良いのかどうか迷っています。

 

借入予定額を基に買換え物件に係る住宅ローン控除の見込額(10年間で最大5百万円)を計算し、3千万円特別控除を適用した場合の所得税等軽減額との有利比較をしなければなりません。仮に住宅ローン控除見込額が4百万円とすれば、長期譲渡所得の適用税率20%で割戻した金額は20百万円になりますので、ご説明の様に1千万円程度の売却益であれば3千万円特別控除の適用は見合わせた方が得策です。なお前年分及び前々年分に適用済みの住宅ローン控除に係る修正申告ですが、ご自宅売却後に買換え資産を取得されるのであれば必要が有りません。逆の場合は必要になります。

住宅ローン控除に関しては、次の5つの「居住用財産の譲渡所得の課税の特例」との重複適用が認められていません。特例の概要は、別稿「居住用不動産を売却する場合は、必ず5つの優遇措置をチエックして下さい」をご参照下さい。
①所有期間が10年超の居住用不動産を譲渡した場合の軽課税率(措置法第31条の3)
②居住用不動産を譲渡した場合の3千万円特別控除(措置法第35条)
③所有期間が10年超の居住用不動産を買換えた場合の課税の繰延べ(措置法第36条の2)
④特定の居住用不動産を交換した場合の課税の繰延べ(措置法第36条の5)
⑤既成市街地内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換(措置法第37条の5)

重複適用の場合は以下の制約を受けることになります
1.居住用家屋等を居住の用に供した年分・その前年分・その前々年分の所得税について上記の居住用財産の譲渡所得の特例の適用を受けている場合は、居住の用に供した年分以降10年間について住宅ローン控除の適用を認めない。(措置法第41条第20項)
従って設例で3千万円控除の適用を受けた場合は、以降10年間住宅ローン控除の適用が受けられなくなります。

2.居住用家屋等を居住の用に供した年の翌年・翌々年中に当該居住用家屋並びにその敷地以外の資産(居住用財産等に限る)を譲渡して、その譲渡に就き上記の居住用財産の譲渡所得の課税の特例を受けるときは、居住の用に供した年分以降10年間について住宅ローン控除の適用を認めない。(措置法第41条第21項)
令和2年税制改正
 新規住宅等を居住の用に供した年の3年目に該当する年中に、従前住宅等の譲渡をして居住用財産の譲渡所得の課税の特例を受ける場合も、同様に住宅ローン控除の適用が認められなくなります。この改正は令和2年4月1日以降に行われる従前住宅の譲渡から適用されます。

3.上記2に該当する者が、当該譲渡をした年の前年分・前々年分の所得税について住宅ローン控除の適用を受けている場合は、当該前年分・前々年分の所得税についての修正申告書(確定申告書を提出していない場合は期限後申告書)を提出し納付すべき税額を納付しなければならない。(措置法第41条の3第1項)

設例が自宅を売却した資金で買換え資産を取得するとの前提であれば2には該当しませんので、修正申告書を提出する必要は有りません。若し買換え資産の取得を先行し、翌年以降に住替え前の自宅を売却して譲渡所得の特例を受けるのであれば2に該当し、修正申告の必要がありますので御留意下さい。

 
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