日本の永住権をお持ちの方から中国に在る不動産の売却又は贈与に係る税金のご相談

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初めまして当方は東京都在住、36歳で日本の永住権を保有している中国人です。幼少期より日本で育ち現在は日本の大手企業に勤務しております。両親も日本の永住権があり此れ迄日本中心の生活でしたが、現在は日中両国を行き来しております。父は上海に不動産を所有しており、私への贈与、或いは第三者への売却を検討していますので、税務面から専門家のアドバイスを頂戴出来ればと思います。
私自身は現在日本国籍への帰化を申請中で、今後1年以内に日本人になることが予定されています。但し本相談の結果次第では変更も有り得るので確定ではございません。私が日本人になると、中国からみて外国籍の人間には不動産の贈与が出来なくなることから、今のうちに今後の方向性を決めたいと思います。選択肢がある内にどのようにすれば良いか、様々な税理士のホームページを拝見する中で、最もこの分野の知見を有すると思われる先生に是非ご相談させて頂きたく存じます。

 

先ず不動産を第三者に売却した場合の所得税からご説明します。不動産の所有者である父に対する中国側の課税ですが、満5年且つ家庭唯一且つ普通住房の要件を全て満たしていれば、増値税・個人所得税・土地増値税の何れも免税になります。一方日本側の課税ですが、非永住者であれば国外源泉所得に就いては“国内において支払われたもの又は国外から送金されたもの以外”は課税対象になりません。非永住者以外の居住者であれば国外源泉所得を含む全ての所得が課税対象になります。お話では引退後に日中を往来されて居られる由にて、非永住者に該当するか否かは事実関係次第です。
次に売却代金或いは不動産の現物を貴方に贈与した場合の贈与税に就いてご説明します。中国側の課税ですが、現在の処は相続税又は贈与税に類する税制がありません。日本側の課税ですが、受贈者が日本に住所を有して居り且つ短期滞在者(贈与前15年以内において国内に住所を有 していた期間の合計が10年以下の者)でなければ、贈与者の住所の有無や贈与財産の所在が国内外かを問わず課税対象になります。考えられる対応としては、贈与時点で貴方が海外に転出する方法があります。日本国籍がないため国外財産に就いては課税対象外になります。

日本の永住権を持つ親子から、どの様にすれば資産価値が増大した上海所在のマンションを、親から子に合法的かつ税負担を最小にして承継出来るだろうかとかのご相談です。
中国側での不動産譲渡益への課税については、弊別稿の<所得税(不動産の譲渡及び貸付):中国に在る不動産を譲渡された方から日本の所得税の確定申告のご相談>に詳しく説明していますので其方をご参照下さい。一点補足説明しますと、不動産売却代金の中国外持ち出しの問題があります。中国では個人の外貨管理(外貨と人民元の交換・外貨の対外送金・外貨の現金管理)に関する厳しい規制が敷かれています。中国人公民と外国人とで扱いが異なりますが、この方と父親は中国籍なので中国人公民としての規制が適用されます。外貨口座内の対外送金はUS$5万以内であれば身分証明書の提示により可能です。それを超える場合は、他に用途説明資料の提示が求められます。外貨現金での対外送金はUS$1万が限度になります。携行外貨の規制も略同様です。
日本側の譲渡所得課税ですが、非永住者であれば譲渡代金を日本で受領するか、海外から日本に被仕向送金をしなければ課税対象外と申し上げました。それでは非永住者とは何でしょうか?所得税法第2条④には、”非永住者とは居住者のうち日本の国籍を有しておらず、かつ過去十年以内において国内に住所又は居所を有していた期間の合計が五年以下である個人を言う”と定められています。本事案は住所や居所の判定のほか、過去10年の出入国記録を立証しなけければならない為ハードルが高そうです。
日本の贈与税課税ですが、受贈者の住所が日本に無ければ国外財産に課税されない(制限納税義務者)ケースが2通り考えられます。一つは贈与者・受贈者が共に過去10年間日本に住所がなかった場合で、受贈者の国籍制限はありません。これは永住権保持者に限らず全ての贈与に就いて可能な対応ですが、そもそも10年も掛けて対策を講じるとすれば大凡現実離れした話です。もう一つは日本国籍を持たない受贈者が出国する方法です。移住でも海外赴任でも良いのですが、贈与時に日本に住所がなく且つ贈与者が一定の外国人であれば制限納税義務者になります。一定の外国人とは、出入国管理及び難民認定法別表第1の在留資格を有する人を言いますので、ご相談者の父はこれに該当します。
こうすれば日本の贈与税を免れることが出来ますが、実施するに当たっては能々考える必要があろうかと思います。米国その他移住(転勤)先に相続税制や贈与税制があれば、日本での課税がその国の課税に置き換わるだけの話です。無論彼我の適用税率差の影響は有ります。従ってこれ等の税制がない国、例えば中国やシンガポールへの出国を検討することになります。尤も中国側での外貨の持ち出し規制がある以上は、本来の主旨目的に適うかどうか疑問なしとしません。

 
*本稿には一部に筆者の私見が含まれていますので御承知置き下さい。
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