国境を跨る贈与に拠る無税での財産移転をお考えの方は、日本の贈与税の課税のみならず受贈者居住地国での贈与税の課税のチエックが欠かせません。これを怠り申告の要否を錯誤すると国際間二重課税で財産の多くを失うことにもなりかねません。因みに外国税額控除は如何なる場合も適用される訳ではなく、納税義務者の居住地国で申請した場合にのみ適用される制度です。
ご相談の事案について先ず日本での贈与税課税についてチエックして見ましょう。贈与者は日本に10年以上住所を有する居住者ですから、受贈者の住所や国籍の有無並びに贈与財産の所在地に拘わらず受贈者は日本で納税義務者になります。但し暦年課税に就いては受贈者1人当り年110万円の基礎控除があり非居住者にも認められていますので、申告の必要はありません。なお令和6年1月1日以後の贈与については、相続時精算課税に係る基礎控除の創設などの改正が行われます。お孫さんは贈与者の直系血族なので、贈与年の1月1日現在で20歳以上であれば相続時精算課税制度の適用が受けられます。一考に値すると思います。
次に米国での贈与税課税についてのチエックです。税制の概要は弊別稿「アメリカに所在する不動産の相続や贈与に係る米国遺産税・米国贈与税の申告について」をご参照頂きたいのですが、米国市民・居住者と米国市民以外の非居住者では贈与税の課税対象財産の範囲が異なります。因みに米国市民以外の非居住者とは、米国市民以外で贈与時に米国以外に住所(Domicile)を有する者を言います。米国市民・居住者は全世界財産に対して米国の贈与税が課せられるのに対し、米国の市民でない非居住者は米国に所在する財産(無形資産を除く)に対してのみ贈与税が課せられます。
贈与税の課税金額は贈与財産価額から年間基礎控除額を引いた金額です。年間基礎控除額は、暦年で受贈者1人当たりの贈与者非課税枠が$17000(物価水準に拠る変動あり)となっています。
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