店舗併用住宅のリフォームに係る住宅ローン特別控除を失念した方からのご相談

Print Friendly, PDF & Email
美容院を営む自営業者です。店舗兼自宅が老朽化したので耐震補強を目的に、平成25年に大規模リフォーム工事を実施しました。費用は7百万円で、内5百万円は銀行ローンを利用しています。平成25年と26年の確定申告は期限内に済ませて居りますが、店舗併用住宅の増改築が住宅ローン控除の対象になることを知らなかったので、適用を受けて居りません。税金を納め過ぎた場合、5年以内であれば還付請求が出来ると聞きましたが具体的にどうすれば良いでしょうか?

 

勘違いし易いのですが、店舗併用住宅の場合は増改築後の家屋の床面積の2分の1以上が専ら居住の用に供されていれば控除の対象になります。居住用面積・店舗用面積に区分する必要は有りません。床面積基準(50㎡以上)に就いては、増改築後の全体床面積が50㎡以上であれば対象です。
住宅ローン控除を失念した場合の対応は、(1)確定申告をしていない場合と、(2)確定申告をしている場合に、分けて考える必要があります。平成25年分と平成26年分については、既に確定申告書を提出済みなので更正の請求に拠り還付請求をすることは出来ません。これに対し平成27年分以降は、必要事項の記載と必要書類を添付した確定申告書(期限後申告書を含む)を提出すれば住宅ローン控除の適用を受けることが出来ます。

 

(1)確定申告をしていない場合

住宅ローン控除は、”確定申告書に、控除に関する必要事項の記載と、必要書類の添付が有る場合に限り適用する(措置法第41条第25項)と明記されています。従って、新たに確定申告書(期限後申告書と言います)を提出し、必要事項の記載と必要書類の添付をすれば、過年度分であっても遡及して適用を受けることが出来ます。還付申告書の提出期間ですが、還付申告書を提出できる日(還付年分の翌年1月1日)から5年を経過する日までとされています。例えば平成27年分であれば、平成28年1月1日から平成32年12月31日までが提出期間になります。

(注)その年の控除限度額が所得税額を上回った場合には、住民税額から控除することとされています。ところが地方税法の規定で、これが適用されるのは期限内申告の場合に限られていますので、期限後申告により住民税から遡及還付を受けることは出来ません。

多くのサラリーマンは年末調整で課税関係が終了するため、確定申告を行っていないと思いますが、ふるさと納税や医療費控除等で確定申告をしている場合は下記(2)をご参照下さい。

(2)確定申告をしている場合

既に提出済の平成25年分と平成26年分には、(1)でご説明した住宅ローン控除を受けるための必要事項の記載及び必要書類の添付が有りませんでした。一般にこの様な縛りを「当初申告要件」と言いますが、先の税制改正でこれが廃止された制度が幾つかあります、残念ながら住宅ローン控除制度については存置されました。本件は当初申告要件を満たさないので、平成25年及び平成26年については、遡及適用を受けることが出来ません

還付請求には、確定申告(期限後申告)に拠るものと、更正の請求に拠るものの2種類あります。ご相談者は、恐らく後者を念頭におかれているのでしょう。確かに平成24年度税制改正で、更正の請求期間が1年から5年に延長されました。然しながら、今回のケースで更正の請求が認められる可能性はありません。更正の請求とは、申告書に記載した税額等の計算が法令に従っていなかったり、間違えたりしていた為に納付すべき税額が過大になった場合の手続きです。然しながら本件はこれに該当せず、任意に選択しなかっただけの話なので更正の請求の対象外になります

措置法第41条第26項には、「宥恕(ゆうじょ)規定」が設けられています。そこには、”税務署長は、必要事項の記載や必要書類の添付がない確定申告書の提出が有った場合に、已むを得ない事情があると認められる場合は第1項の規定を適用することが出来る”と書かれてあります。このため、嘆願書を出せば何とかなるのではとお考えの方も居られる様ですが、実際に宥恕されることは無い様です。

 
質問や相談をご希望の方は、ホームの「ご質問/お問い合せ」をご利用下さい。ビデオ通話での打合せも可能です。
申告その他の実務をご希望の方は、ホームの「料金のご案内」をご参照下さいます様お願い申し上げます。

関連記事: