中国に在る不動産を譲渡された方から日本の所得税の確定申告のご相談

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昨年上海に在るマンションを売却しました。投資目的で買ったため未入居で、所有期間は4年強です。中国での申告及び納税は既に終わっていますが、先般所轄税務署から日本での確定申告がどうなっているか問合わせを受けました。どうやら日本での確定申告を失念していた様ですが、そうすると中国と日本で二重課税が発生します。また申告漏れに対してはペナルティ―が課せられるそうですが、どうすれば良いでしょうか?因みに昨年の不動産譲渡以外の収入は国内給与だけで、これは会社による年末調整で完結しています。

 

既に昨年分所得税の確定申告期限は徒過していますので、速やかに期限後申告書を提出する必要があります。日中の二重課税については、確定申告書に外国税額控除を受けるための必要事項を記載し、且つ外国所得税額が課せられたことを証する書類を添付すれば二重課税の一定部分が排除されます。期限後申告であっても外国税額控除が適用可能であることに御留意下さい。ペナルティーですが、申告漏れが有る旨の当局からの調査通知後の確定申告ですので、10%(又は15%)の無申告加算税の賦課を免れることは出来ません。国外財産調書を未提出の場合は、更にペナルティーが加算されます。そのほか納付日までの延滞税を併せて支払う必要があります。

中国での不動産取引に起因して日本で所得税の確定申告を行うに当っては、先ずマンション譲渡に係る現地での不動産関連法制や実務慣行を正確に理解して置くことが必要になります。
中国では土地についての私有が認められず、土地は全て国有地又は農民集団所有地になります。都市部の大部分は国有地です。一方建物には私有が認められていますが、その敷地の利用には国有土地(建設用地)使用権の譲渡を受ける必要があります。使用権の年数は用途毎に、40年~70年と定められていますが、居住用地は70年で住宅が存在する限り満期時の自動更新が認められています。中国の土地使用権は日本の通常の借地権とは異なり物権で、設定や権利移転を受けた場合には登記が必要となり産権証(日本の登記済権利証に相当)が発行されます。中国のマンション譲渡は、土地使用権(物権)付き建築物区分所有権の譲渡であることを良く理解して、日本での確定申告に臨む必要があります。つまり非減価償却資産である土地等と減価償却資産である建物とに分けて、取得費を計算しなければならないと言うことですが、内訳が分らないことが多く実務が面倒です。

中古住宅の売買契約書は、政府の管理監督下にある中古住宅取引サービスプラットホームのWEB上で締結しなければなりません。この際の成約価格は不動産管理局が要求する中古指導価格以下であることが必要です。この基準価格と変動幅が一定範囲に収まっていれば、普通住宅の売買として後述する土地増値税の減免措置が受けられます。
実務慣行として中古住宅取引には陰陽契約が存在することが珍しくありません。表向きのWEB成約価格の他に実際の取引価格が存在する訳ですが、税務当局は不動産仲介業者に対してこれを厳禁しています。該当する場合は、不動産評価師の評価価額を基に中古住宅の申告価格を算定しなければなりません。申告価格が著しく低くかつ正当事由がないと認定された場合は当局査定により税額が決定されます。
また不動産の売却に関する税金や登記費用は、売り手である外国人が負担するのではなく、買い手が実質的に負担することが一般的です。不動産の登記変更には納税証明書が必要となることからこの様な商習慣が存在するものと思われます。勿論、外国人が自ら申告納付を行い、残額を国外送金することも可能です。

不動産の譲渡利益に対しては、個人所得税が課せられます。国・地方が財源を分割する共有税です。この他に不動産の販売や土地使用権の譲渡に就いては増値税が課せられますが、これは国内の貨物と加工役務の販売やサービスの提供等に対する一種の付加価値税で、日本の消費税に相当するものですから今回の説明からは省きます。
個人所得税は9種類の所得区分に分けられ、夫々に異なる税率が適用されます。′19年改正に拠り賃金給与所得ほか3種類の所得には総合課税方式が適用されることになりました。但し居住者に限定されており、非居住者には従前通り分離課税方式が適用されます。
マンションの売却益は財産譲渡所得に該当し、適用税率は20%の比例税率です。課税所得金額は、譲渡収入から取得価額と譲渡費用を控除して計算しますが、所得金額が正確に計算できない場合は税務当局の査定(売値の1%~5%程度を所得金額と見做す)に拠ることになります。実際には取得価額が分っているにも拘らず、この取扱いを逆手に取る事例(注)も少なくない様です。尚5年以上所有する一定の居住用住宅の譲渡には免税措置が採られています。
(注)日本の確定申告では、この様な見做し所得金額計算は認められません。取得費が不明の場合は、概算取得費控除により売値の5%が取得費(=95%が売買利益)とされることがあります。中国での所得金額計算に固執して藪蛇とならぬ様に御留意下さい

二重課税の問題ですが、日本(居住地国)での所得税確定申告において外国税額控除の適用を受けることが可能です。日本の不動産譲渡所得は分離課税で、所有期間が5年超の場合の適用税率は国税・地方税合計で20.315%、5年以下の場合は39.63%ですから、中国個人所得税の太宗が日本の所得税・住民税から控除できることになります。
中国の個人所得税法では、所得者を納税者とし、所得を支払う企業や個人を源泉徴収義務者とする源泉徴収制度が採られています。これには予定控除予定納税(中文では予控予納)と代理控除代理納付(中文では代控代納)の2種類ありますが、財産譲渡所得には居住者・非居住者を問わず代理控除代理納付が適用されます。適用税率は20%の比例税率で、課税標準額は「収入額ー財産原価ー合理的費用」になります

 
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