民法第768条で、離婚をした者の一方は相手方に対して財産の分与を請求できると定められています。この場合、財産を貰う側には原則として贈与税が掛かりませんが、渡す側には所得税が掛かる場合が有ります。簡単に纏めると次の通りです
①現預金で分与した場合には、所得税は発生しません。
②現預金以外の資産、例えば不動産や株式を分与した場合には、分与をした相手方に対しその時の価額(時価)で資産を譲渡したことになりますので(所得税基本通達33-1-4)、時価が取得費と譲渡費用の合計を上廻ると譲渡所得が発生します。
ところで居住用財産の譲渡については幾つかの優遇措置が設けられています。先ず3千万円特別控除です。現に居住している家屋の譲渡のほか、居住しなくなってから3年を経過した年の年末までの譲渡についても適用があります。但し配偶者その他の特殊関係者への譲渡については適用が有りません。また適用を受けるには、譲渡をした年分の確定申告書に適用を受ける為の必要事項の記載と住民票その他の必要書類の添付が条件(確定申告要件)になります。税務署からの通知に住民票云々の記載があったのはこの為です。
このほか所有期間が10年超の場合は、6千万円以下の所得(3千万円控除の適用を受けた場合は適用後)に対する軽減税率の適用が受けられます。国税・地方税合わせて14.21%の分離課税になります。3千万円特別控除後の譲渡益に適用されますが、3年に1度の制限があります。
特殊関係者への譲渡に該当するかどうか事実関係次第ですが、離婚手続き終了後に財産分与したのであれば、分与時点では特殊関係者ではないので特例適用が認められます。正式な離婚前に財産分与した場合ですと特殊関係者への譲渡に該当しますので受けられません。因みに、法的には離婚届の受理日を以て離婚が成立します。
ところで確定申告要件ですがどうやら確定申告はされていない様なので、必要事項の記載と必要書類を添付した期限後申告書を提出すれば特例の適用が受けられると思います。
若し確定申告書を提出済みであれば、宥恕規定(*)に拠る救済措置の可能性もありますので税務署へご相談されては如何でしょうか。
(注)宥恕規定とは、確定申告書の提出がなかった場合や有っても必要事項の記載と必要書類の添付がなかったことについて、已むを得ない事情が有ると認められる場合には税務署長の職権で適用を認める規定です。
ご参考までに財産分与を受けた元妻が当該物件を譲渡した場合の取得費ですが、所得税法第60条(贈与等により取得した資産の取得費等)に拠り元夫の取得費を引き継ぐことは出来ません。財産分与により取得した財産は、その分与を受けた時の価額が取得費になります。長期譲渡所得・短期譲渡所得の判定も財産分与日が起算点になります。
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