遺産分割協議書の捺印後に疑問や不信が出てきた方からやり直しが出来ないかとのご相談

Print Friendly, PDF & Email
亡くなった父の遺産分割と相続税の申告を昨年行いましたが、遺言執行人である弁護士や提携税理士の説明に納得が行きません。どうすれば良いか、御意見を頂戴出来ないでしょうか?
先日、スポット相談のお客様が見えられました。ざっと、こんな話です。
QT
1昨年末に父が亡くなった。法定相続人はこの方と妹さんだが、不動産賃貸業を営む父とは不仲で、病人の面倒や金銭管理は第三者の女性が行っていた。
公正証書による遺言書があり、全ての遺産はこの女性と、父の兄弟その他1名に遺贈するとの内容であった。昨年の夏、遺言執行人である弁護士から姉妹に、遺産分割協議書案の提示があった。内容的に不満が有ったのでその旨伝えたところ、弁護士から“それでは遺言書の通り全ての財産を受遺者に分配する”と言われた。仕方なく遺産分割協議書に捺印し、申告も終わっている。
申告の際に、税理士から預金残高に不足が有るとの指摘が有った。調査の結果、件の女性が父の死亡前後に引き出していたことが判明したが、レシート等が無いため使途は分からない。受遺者である父の兄弟への立替医療費債務として処理したとのことだが、良く理解できない。病院に問い合わせたが、その様に多額の請求はしていないとの回答であった。
UQT

お話を伺っていて直ぐに浮かんだ疑問は、公正証書遺言があるにも拘らず、なぜ遺産分割協議書を作ったかです。恐らく理由はこうでしょう。
法定相続人たる姉妹の遺留分は、相続財産の50%です。遺言内容に拘らず、これだけは保障されています。一方、遺産分割協議では、共同相続人全員の合意が有れば、法定相続分にも遺言にも拘束されずに、自由に遺産分割をすることが出来ます(民法第907条)。
このため、敢えて遺留分を一切考慮せずに遺言書を作成し、改めて遺産分割協議書に共同相続人の判を押させたものと思われます。弁護士から、遺産分割協議内容に不満があるなら、遺言書の通り分配すると言われ、やむなく承諾したとのことですが、毅然として拒否すれば良かったのです。別途に遺留分の減殺請求を行うと主張する、これが正解でした。

もう一つ理由が有ります。父には2千万円近い債務が有りました。その大部分が、亡くなった年分の所得税と消費税です。この金額は、亡くなって4ヶ月以内の所得税準確定申告により確定します。相続人以外の受遺者が負担すると債務控除が受けられませんので、姉妹に負担させた様です。多額の租税債務は、不動産の譲渡所得に起因するものですが、何故病床にある父がその様な不動産取引をしたのか、釈然としません。

ご相談者に何ができるか?遺産分割協議のやり直しが考えられます。
“脅迫や詐欺などの悪意が有った場合に、関係者全員の合意が有れば可能ですが、ただ本件は難しい印象を受けます。ご希望があれば、提携弁護士事務所をご紹介しますが。”
と申し上げたところ、
“最初からご相談をすれば良かった。士業の先生にも色々ある様ですが、私たちには見分けが付かないので。”
とすっかり気落ちされたご様子で帰られました。

 
質問や相談をご希望の方は、ホームの「ご質問/お問い合せ」をご利用下さい。ビデオ通話での打合せも可能です。
申告その他の実務をご希望の方は、ホームの「料金のご案内」をご参照下さいます様お願い申し上げます。

関連記事: