相続で取得した取得価額が分らない上場株式の譲渡所得に関するご相談

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出版会社の役員です。給与収入が2千万円を超えて居りますので、確定申告の税務代理をお願いします。なお自宅マンションを買換えましたが、売買代金差額は自己資金と父から相続で取得した上場株式(1社分)の売却代金で賄いました。ところが上場株式の取得価額が分かりません。証券会社の預り残高明細書には買付単価が記載されていますが、取引報告書に譲渡利益の計算はなくまた源泉徴収もされていません。

 

売却したマンションの取得費も不明ですが、此方の方は推計取得費で計算した長期譲渡所得金額が3千万円特別控除額を大きく下回っているため、特段問題になることはなさそうです。住宅ローンの利用がなく、面倒な3千万円所得控除と住宅ローン税額控除の有利選択も不要です。合計所得金額が3千万円超なので、認定住宅新築等特別税額控除(最大65万円)の適用もありません。
本題の取得費不明の上場株式の譲渡所得計算ですが、預り残高証明書に記載された買付単価は参考値に過ぎないため、実際取得価額を調べて譲渡所得を計算する必要があります。

上場株式の取得費ですが、証券会社の残高報告書に記載されている買付単価は、単に口座受入日の相場を参考に付しているに過ぎません。2009年1月より前にタンス株等の現物を保管振替に預けたものは取得価額が分らないものが多く、便宜この様に処理されたものと思われます。

上場株式等の取得価額が分らない場合は、次の方法により調査するものとされています。
ⅰ)証券券会社などの金融取引業者から送られてくる取引報告書を確認する
ⅱ)過去10年以内に購入したものであれば金融取引業者の顧客別勘定元帳で確認する
ⅲ)10年超の場合は株式事務を取り扱う信託銀行から株式移動証明を取得し、取得時期に応じた株価を確認する
ⅳ)どうしても分からない場合は5%の概算取得費控除を用いる

残念ながらお話を伺う限り、ⅰ及びⅱでの算定は無理です。ⅲも信託銀行の協力が得られるかどうかが分かりません。そこで已む無く証券会社の預り残高明細書に記載された買付単価を用いて、譲渡所得を計算することにしました。相続日は受入日より随分前なので、明らかにロジック的には破綻しています。税務署から指摘が有ればⅲで再調査するとの前提でしたが、幸い何もありませんでした。実務ではこの様に処理されている方も少なからず居られるのではと思料します。
 
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