アメリカ在住の方(非居住者)が一般口座にある国内株式を売却した場合の確定申告と租税条約に関する届出書についてのご相談

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海外勤務でアメリカ在住が4年になる、いわゆる日本の非居住者です。実は日本の証券会社で日本企業の株式を幾つか保有しており(証券会社には海外転居を届出済み、一般口座で管理中)近々売却する予定でいます。証券会社からは、これらの株式を売却した場合は一般口座なので譲渡益に対する源泉徴収がなく、従って本人が確定申告するようにと言われています。
アメリカと日本の租税条約上、株式のキャピタルゲインは日本では非課税で、アメリカで納税すればよいと理解しておりますが、これは日本の税務署に対しては何ら申告をせず、アメリカで納税するだけで良いと言うことなのでしょうか?後々日本の税務署からお咎めがないようにしたいので、やるべきことは何か専門家の方のアドバイスを頂きたいと思います。
実は、ずっと『租税条約に関する届出書』を出す必要があると思い込み、証券会社に問い合わせていたのですが反応が鈍く、色々調べている内に、当届出書はあくまでも証券会社が私に支払う際に租税条約で規程の税率を適用する(あるいは源泉徴収しない)ための申請であって、支払い者である私が『非居住者でありかつアメリカとの租税条約上日本では確定申告しません』という申請ではない、のではないかと思い始めてきました。
長文にて失礼ですが、どうぞ宜しくお願い致します。

 

海外居住者(=日本の非居住者)の場合日本で課税を受けるのは国内源泉所得のみです。課税方法は、その者が日本国内に恒久的施設(P/E)を有するかどうかで異なります。文面からすると、貴方はP/Eを有さない非居住者に該当するものと拝察致します。P/Eを有さない非居住者が日本国内で株式等を譲渡した場合は、6ケースに該当する場合のみが国内源泉所得として課税され、該当しなければ課税されません。6ケースの過半は買い集め等の特殊な取引ですので、一般に考えられるのは
 ①日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得
 ⑥日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得
の2つです。但しこれに該当する場合でも、租税条約に別段の定めが有る場合は此方が優先します。日米租税条約では第13条に拠り何れについても非課税とされています。但し不動産関連株式(不動産割合50%以上)であれば課税対象です。貴方がこれら特殊ケースの何れにも該当しなければ、日本で確定申告をする必要はありません。勿論、租税条約に関する届出書も同様です。

国内の証券会社に特定口座をお持ちの方が、海外転勤で非居住者になると特定口座を利用することが出来なくなります。この場合は証券会社等に対して特定口座廃止届出書を提出したものと見做され特定口座は廃止されます。出国前に特定口座廃止届出書を提出し、且つ特定口座継続適用届出書を提出すれば、一般口座内での売買が可能です。帰国後に特定口座開設届出書と出国口座内保管上場株式等移管依頼書を提出すれば、一般口座内株式を特定口座に戻して取引を再開することが出来ます。
非居住者期間中の日本での株式譲渡益に対する課税ですが、P/Eを有さないとの前提であれば次の6ケースの何れかに該当する場合のみが課税対象になります。因みに、①~⑤は15.315%の申告分離課税、⑥は総合課税が適用されます。非居住者ですから所得税及び復興特別所得税のみで、住民税は課税されません。
 ①日本に滞在する間に行う日本の会社の株式売却による所得
 ②日本の会社の株券等の買い集めをして日本の会社等に対し売却することによる所得
 ③日本の会社の特殊関係株主等である非居住者が行う当該会社の株式売却による所得
 ④税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の売却による所得
 ⑤特定の不動産関連法人の株式の売却による所得
 ⑥日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の売却による所得
なおこれ等に該当する場合でも二国間の租税条約に拠り課税されない場合がありますので、個別に当該租税条約をチエックする必要があります。

租税条約に関する届出書ですが、これは源泉徴収の対象となる国内源泉所得の支払いを受ける非居住者等が、日本に於いて源泉徴収される所得税及び復興特別所得税について、租税条約に基づき軽減又は免除を受けようとする場合に提出する書類です。ところが、所得税法第212条①で株式譲渡益は源泉徴収をすべき非居住者の国内源泉所得に含まれませんので、届出書を出すことに何の意味も有りません。勿論確定申告の要否とは無関係の話です。

 
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