来年3月に期限を迎える今年分の不動産所得とマンション譲渡所得の確定申告ですが、特に譲渡所得の起因となる取得費の計算(不動産所得の未償却残高と一致させる必要)と、外国税額控除に係る繰越控除限度額の処理が面倒です。所得金額が大きいだけに呉れ々もご注意下さい。capital gainについては2016/2017の豪州税制改正に伴い非居住者に対する12.5%の源泉徴収(FRCGW)が行われている可能性があります。この場合は上述のタイムラグは生じませんので、来年3月の確定申告では同一年度内として外国税額控除の適用を受けることが出来ます。
日本の居住者に対するオーストラリアでの課税ですが、現地の不動産賃貸及び不動産売却に係る収入の何れもが日豪租税条約に拠り対象になります。所得全体に対し32.5%~45%の累進税率で個人所得税が課せられ、基礎控除や軽減税率の適用は受けられません。
不動産所得金額は、賃貸料収入から管理費や修繕費等の総費用を差引き、更に総費用の10%相当の消費税(GST)を控除した残額です。これに税率32.5%(8万弗以下)を乗じるだけですから至って簡単な計算です。本事案では、非居住者への家賃支払いに係る源泉徴収はありません。
譲渡所得金額は、売却収入から取得費及び譲渡費用を控除した残額ですが、1年以上保有の不動産の譲渡については所得金額の2分の1の減免措置があります。ここで日本の譲渡所得金額の計算とは異なる点が幾つかあります。先ず取得費ですが、日本では実際取得金額を土地部分と建物部分に分け、後者に就いては所与の減価償却計算を行います。これに対し豪州の取得費は、実際取得価額に物価上昇率等を調整したindexation rateを乗じた金額になります。次に譲渡費用ですが、保有期間中の管理費や固定資産税も含めるため、日本基準とは大凡懸け離れた金額になります。capital gainの申告書を見ても、日本の譲渡所得金額計算には殆んど役に立ちません。
豪州で非居住者が行った不動産の譲渡には源泉徴収が行われます。従来は売却代金200万弗超の譲渡に就き10%の源泉徴収でしたが、2017年7月1日以降は75万弗超の譲渡に就き12.5%の源泉徴収へと改正されました。この変更は本事案に於ける外国税額控除の適用に際して重要です。改正前であれば、外国所得税の発生年度(豪州での確定申告時)と外国税額控除限度額の創出年度の期ずれに起因して繰越控除処理(3年以内)が必要でしたが、改正後は外国所得税の発生(豪州での源泉徴収時)と限度額創出が同一年度に納まるため直接的に控除計算を行うことが出来ます。但し、源泉徴収は一種の外国所得税の予納手続きですから、翌年に豪州側の確定申告で外国所得税額が増減額した場合には、日本の確定申告に於いて外国税額控除に係る所与の調整が必要になります。
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