相続で取得した不動産を売却した場合、土地取得費を調べるのは非常に厄介です。増してや被相続人が特定事業用資産や居住用不動産の買換え特例制度を使っていた場合は、単純に推計取得費で申告すると過少申告で否認されることになりかねません。税務署は過去の買替特例データーを根据え管理して居り存外に見逃しは少ない様です。特に不動産バブルの’90年前後に取得した土地を売却した場合は、該当有無のチエックが重要です。これには閲覧制度を利用して、被相続人の該当年分の申告書を調べるほか手がありません。さもなくば5%の概算取得費控除に拠り申告するかです。
特定事業用資産の買換え特例のうち最も多く利用されるのが、所謂7号買替え(10年超所有の土地等・建物・構築物から、国内にある300㎡以上の土地等で一定の用に供されるもの・建物・構築物への買換え)です。特定事業用資産の譲渡益のうち、買替資産に対応しない部分及び買替資産に対応する部分の20%相当額は通常の課税が行われますが、買替資産に対応する部分の80%相当額については課税の繰延べが行われます。繰延べられた譲渡益は、減価償却費の減少及び譲渡所得計算での取得費の減少の形で課税の回収(措置法第37条の3)が行われます。有体に言えば、被相続人の課税が少なく済んだ分だけ、将来の相続人の課税が増えることになります。
ところで此処で注意が必要なのは、先述の通り昭和32年当時と現在とでは優遇措置の中身が違っていることです。例えば当時の土地の面積制限ですが、買替資産の地籍合計で譲渡資産の地籍の5倍迄でした。また圧縮割合も当時は100%です。30年前の税制を調べるのは厄介ですが、現在と同じだろうと高を括り手を抜くと痛い目に遭います。
確定申告作業を進めているうちに過去の申告ミス(過誤納)に気が付きました。賃貸マンションの取得価額を第二次相続時の未償却残高にしていましたが、正しくはお父様の圧縮後の原始取得価額です。この種の誤りは結構多いようです。減価償却費計算ミスに因り過去10数年分の過誤納が発生しており、うち5年分は更正の請求が可能ですがどうするか検討中です。
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