個人や免税事業者から賃貸不動産を購入した場合の仕入税額控除に関するご相談

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取引銀行から未だ市場に出回っていない優良賃貸住宅を紹介されました。大型ショッピングモールに近い市内有数の好立地に在り、大手メーカーの施工且つデザイン性に優れた物件で、グロス利回りが12.5%有ります。価格は49.8百万円です。融資承認も下り契約書の詰めの段階ですが、売主側仲介業者と譲渡価額の契約上の表記で揉めています。業者の主張は、売主は個人の免税事業者で消費税と関係がないのだから、土地・建物一括の譲渡価額となり、内訳や消費税の表記は出来ない。今までもそうして来たと言うもので譲りません。免税と非課税を混同しているのではと反論したものの、険悪な関係になりそうなので議論を棚上げしています。何か良い知恵はないものでしょうか?

 

何時もお世話になって居ります。Google St Viewで物件を拝見しました。確かに一目でミサワの施工物件と分るお洒落な建物ですね。さて契約書の譲渡価額ですが土地・建物の一括表示とするか、区分表示するかの二者択一になります。どちらも対応可能ですが、一括表示の場合は固定資産税評価額で按分します。
土地価額:49,800,000円X9,863,788÷26,498,412=18,537,588円
建物価額:49,800,000円X16,634,624÷26,498,412円=31,262,412円
区分表示の場合ですが、先ず路線価を基に土地部分の時価を積算すると、
土地価額:@19,000円÷0.8X590.64㎡=14,027,700円になります。
次に国土交通省土地情報システム(不動産取引価格情報)を用いた近隣取引事例の比準法で時価を積算すると、
土地価額:@25,000円X590.64㎡=14,766,000円になります。
後者の場合の建物価額は、49,800,000円ー14,766,000円35,034,000円です。何れにせよこの辺りが相場であろうと思われます。
国交省情報で計算した方が建物部分の金額が多く有利になりますので、この線で不動産業者と協議して下さい。消費税の表示ですが、書こうが書くまいが税込金額の108分の8相当が消費税になることに変わりはありません。売主が免税事業者なので話がややこしくなる懸念があるため、契約書には建物税込本体価額だけを表示する様にして下さい。
(ご参考)
愈々10月から軽減税率の適用が開始されます。この煽りで令和5年10月1日以降は、免税事業者または消費者からの中古住宅の購入に関し、原則的に仕入税額控除が受けられなくなりますので御留意下さい。詳しくは幣HPに解説文を掲載予定ですので其方をご覧下さい。

業者は土地のみならず建物も非課税だと主張している由なので、免税と非課税を混同している嫌いはあります。ただ売主は個人の免税事業者だから消費税を納める義務がなく(翌々年には課税事業者になります)、従って土地・建物の内訳や消費税の表記をする必要がないとの認識は強ち的外れではありません。仮に買主が不動産賃貸業者だとしても、多くは免税事業者なので今回の如き問題はこれ迄生じなかった様です。擦れ違いの原因はここにあります。
ご相談者は不動産賃貸業者です。管理会社(資産保有型)の設立に当り、課税事業者選択届出書を提出しています。言う迄もなく当初の賃貸物件取得に課せられた消費税の還付を受けるためです。滞りなく全額が還付されました。事業は順調に推移しており追加で2棟を取得しましたが、何れも各事業年度の課税売上割合に応じた仕入税額控除の適用を受けています。従って今回の区分表示の要求は譲れない一線です。

免税事業者や事業者ではない消費者から仕入れた場合でも仕入税額控除の対象になります。この場合支払った対価の額は消費税及び地方消費税(以下消費税等)込みの金額とされますので、その対価の額の108分の8相当額の仕入税額控除を行うことができます。
土地・建物の一括譲渡でその内訳が分らない場合は、固定資産税評価額に応じた土地と建物の按分計算が行われます。従って売主側が一括表示に固執したとしても、買主側での対応は可能です。近隣の実際取引事例や公示価格、国土交通省の土地情報システムにより時価の類推が可能な場合は、固定資産税評価額による按分計算と比較し、推計時価の方が低ければ売主を説得して区分表示に応じて貰うのが得策です。

ところが令和5年10月1日に予定されているインボイス制度の導入で事情が一変します。インボイス制度の導入は、消費税率が異なる取引の明細を把握するためと説明されていますが、一番の目的は免税事業者からの仕入に就いて、仕入税額控除の適用を廃止することにあると考えられています。インボイス制度では、インボイス(適格請求書)が無いと仕入税額控除が受けられません。適格請求書の発行事業者になるためには、適格請求書発行事業者の登録申請をしなければなりませんが、原則として課税事業者に限られます。
インボイス制度が導入されても、令和11年9月までの6年間は経過措置として、免税事業者が発行する区分記載請求書(適用税率が10%と8%の何れかを区分記載した請求書)があれば80%~50%の仕入税額控除が適用されます。
古物商等が適格請求書発行事業者以外の者から古物を買い受けた場合は、一定の事項を記載した帳簿の保管により仕入税額控除の適用が認められます。この古物商等の中に宅地建物取引業者が含まれています。ただ適用の対象は、宅地建物取引業者が事業として販売する棚卸資産に限定されていますので、転売目的で取得した場合は仕入税額控除が受けられますが、自己所有や賃貸目的で取得した場合は受けられません。

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