節税対策を兼ねた役員退職金充ての定期生命保険契約に関するご相談

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資本金10百万円の貴金属と宝飾品の小売り業を営む同族会社の役員(44才)です。この処業績が安定して居り内部留保も或る程度貯りましたので、節税対策も兼ねて将来の役員退職金発生に備えた定期生命保険契約の加入を検討したいと思います。然しながら一部の法人向け保険には国税庁による規制の話がある様なので、この辺りも含めたアドバイスをお願いします。

 

御社の場合は、役員の年齢を考えて長期平準定期保険の検討をお薦めします。ただ長期平準定期保険は保険金額が大きく従って毎月の保険料も多額になりますので、30年近くの長きに亙り保険料を払い続けることが出来るかどうかの見極めが重要です。仮に払い続けることが出来なくなった場合は、以降の支払を停止し払い済み保険料を利用して保険契約を存続させることも出来ますが、保険金額が減額され且つ一時的な利益が発生(洗い替え処理)するため経済的な不利益を被ります。ご懸念の通り国税庁が法人向け節税保険に対応した新ルールを策定し、新たに基本通達9-3-5の2(定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い)として公表済みです。節税メリットが圧縮されるため、保険会社の多くが新規募集を停止して居り、この帰趨を見た上で加入の是非を判断されることが必要です。

1.どのタイプの保険が御社のニーズに合致するか
役員保険の加入目的として一般に揚げられるのは、
役員に万一があった場合の事業承継リスクや退職金支払いへの備え
保険料の損金算入による税負担の軽減効果
契約者貸付制度による緊急時の資金調達手段
・その他のセーフティネット機能
です。然しながら一般の終身保険や養老保険、個人年金保険などではニーズに合致しません。定期保険のうち、逓増定期保険や長期平準定期保険がこれ等の機能を具備しています。それでは簡単に両者の商品特性と相違点に就いてご説明します。

2.逓増定期保険と長期平準定期保険
(1)逓増定期保険とは
保険期間の経過により死亡保険金額が当初の5倍までの範囲で増加する定期保険のうち、保険期間満了時における被保険者の年齢が45才を超えるものを言います。解約返戻率のピークが加入後5-8年と早い時期に設定されますので、短期間で保険料総額と同程度の解約返戻金を受け取ることが可能です。但し保険料はかなり割高で、経営を圧迫するリスクがあります。また解約返戻率のピーク期間が短いため、返戻金入金と退職金支払いが同一事業年度内に納まる様にコントロールする必要があります。税法に定める保険料の損金計上基準ですが、前半60%の保険期間については、保険期間満了時の被保険者の年齢に応じて、損金算入/資産計上の割合が1対1から1対3に定められています。残余の40%の保険期間については、その間の支払保険料と資産計上額を経過に応じ取崩した金額の合計額を損金に算入します。
基準保険金額が1~2億円、保険期間は20年程度のものが一般的です。保険料低減のための低解約返戻金制度や契約者貸付金制度は特約になります。ご相談の内容からすると御社には向かない様に思います。
(2)長期平準定期保険とは
被保険者の保険期間満了時の年齢が70才超、かつ加入時年齢に保健期間の2倍を加えた数が105超となる定期保険で、逓増定期保険以外のものを言います。保険期間が一般の定期保険よりも長く、死亡保険金額が加入時から同額で継続するのが特徴です。保険料は逓増定期保険に比べると安くなります。解約返戻率のピークが遅めで、且つピーク期間が長く続く様に設計されています。役員の退職時期を事前に定めて、ピーク期間内にその通り実施する必要があります。逓増定期保険程ではないにせよ保険料が高いので、30年もの長期に亙り払い続けられるかどうかの見極めが重要です。
税法に定める保険料の損金計上基準ですが、前半60%の保険期間については損金算入/資産計上の割合が1対1、残余の40%の保険期間はその間の支払保険料と資産計上額を経過に応じ取崩した金額の合計額を損金に算入します。保険金額は2~3億円、保険期間は20~30年のものが一般的です。逓増定期保険と異なり、基本契約として低解約返戻金制度や契約者貸付金制度があります。ご相談内容からして此方を検討された方が宜しいかと思います。

3.国税庁の新ルール
最高解約返戻率が50%超の定期保険等は、保険料の一部を資産計上することが原則になります。具体的には保険契約をピーク時解約返戻率で、50%以下/50%超~70%以下/70%超~85%以下/85%超 の4区分に分け、更に各契約毎に保険料の金額と保険期間を3分割したマトリクスで資産計上と損金算入の割合を計算することになります。但し解約金相当額のない短期払いの定期保険又は第三分野保険については、その事業年度の保険料が30万円以下であれば支払い時損金算入が認められます。かなり複雑になったため、各事業年度の保険料の税務調整が面倒になりそうです。経過措置ですが、改正通達発遣前の保険契約については従前の損金計上基準が適用されます。
保険期間の中途で保険料支払いが困難になった場合は、解約しても高額な解約返戻金を受け取れないため、代替案として払い済み保険への変更が行われることが有ります。この結果一応保障は継続されますがこの場合は、変更時の解約返戻金相当額を雑収入として益金参入(洗い替え処理)することが必要です。

 
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