課税権の期間制限が過ぎてているにも拘らず自ら贈与税を申告納付された親族についてのご相談

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先日父が亡くなりました。相続人は母と姉そして私の3人です。姉が作成したワークシートに依れば相続財産の正味価額は60百万円で、此れから生命保険金の非課税額15百万円を引くと基礎控除額以下に納まるため、確定申告の必要なしと言うことになります。気になるのが父からの生前贈与で、姉が平成21年に9百万円と平成26年に1百万円、私が平成17年に11百万円と平成25年に10百万円を貰っています。これ等の申告ですが、姉は長らく何もしなかったのに突然無申告が見つかると怖いと言い出し、平成27年2月になって平成21年分贈与に係る本税・無申告加算税・延滞税の合計で2百万円を自ら申告納付しました。私は此れまでの処何もしていません。一方、遺産は法定相続割合に応じて公平に分割する方針ですが、この際に生前贈与財産をどう考えれば良いかも併せてご教示下さい。

 

ご相談者は基本的に贈与税・相続税申告については何もしないとのお考えの様なので、差し出がましいことは言わず税務上のルールはこうなりますと説明するに止めました。課税権の期間制限が過ぎているにも拘らず自主的に申告納付された贈与税に付いては、申告納付時点では未だ国税徴収権が生きていますので還付(更正の請求)は難しいと思います。

先ず相続税の確定申告の要否ですが、ギリギリで基礎控除の範囲内に収まっていると試算されています。ところがワークシートを拝見すると幾つか気になる点があります。
先ずお母様名義の定期預金ですが、原資が被相続人から出ているとの由にて、名義預金として相続財産に加算しなければなりません。
次に自宅敷地を居住用小規模宅地等の特例適用後の金額で評価されています。ところがこの特例は、当該宅地が申告期限内に分割され且つ確定申告書に一定事項の記載と書類の添付がない場合には適用がありません。
最後に生前贈与財産に付いてです。相続開始前3年以内の贈与財産として相続財産に加算すべきものは有りません。然しながら相談者の平成25年分の贈与については、申告漏れを指摘される可能性があります。未だ増額更正の期間制限(除斥期間)6年が徒過していません。結婚資金として貰ったものだから贈与税の非課税財産だとお考えの様ですが、そうとは限りません。生活に必要な家具什器等の購入費用に充てたことを立証出来れば良いのですが(相基通21の3-5)、若し預貯金になっていたり、株式や家屋の購入費用に充てられていた事実があれば課税対象になります。

一方お姉さんの平成21年分の贈与については、既に平成25年3月に課税権の期間制限を過ぎています。それにも拘わらず、平成27年2月に自ら申告納付をしています。税理士さん関与の有無は分りませんが、何故この様な結論になったのか不思議です。偶々当時税制改正があり、平成23年12月2日以降に法定申告期限が到来する国税に係る課税権・更正の請求の期間制限が3年から5年(贈与税の課税権は6年)に延長されましたので、何か勘違いをされた可能性があります。
それはさて置き、課税権の期間制限が過ぎ自主的に申告納付された国税を税務署が収納することは可能でしょうか?これに就いては、国税通則法第72条に ” 国税の徴収権は、法定納期限から5年間行使しないことに由って時効により消滅する ”と定められています。本事案の国税徴収権が消滅するのは平成27年3月ですから、僅かの時間差で可能と言うことになります
勘違いをしたので還付して欲しいと請求することが出来るでしょうか?還付を受けるためには更正の請求手続きが必要ですが、本事案の更正の請求が出来る期間は法定申告期限から1年以内(更正の申出は3年以内)ですので既に期限が過ぎています。残念ながら難しいと思います。

産分割協議に於ける特別受益額としての生前贈与についてご説明します。共同相続人が自由に分割案を決めれば良いのですが、法定相続割合に応じて公平に分割されるとのことなので、民法上のルールを正しく理解する必要があります。本事案でのポイントは2つです。
先ず民法第903条の規定に拠れば、特別受益者の具体的相続分は相続開始時の財産に相続人への遺贈及び生前贈与の価額(特別受益額)を加算し、これに各相続人の法定相続割合を乗じた金額から各相続人毎の特別受益額を控除して計算することになります。此処に言う特別受益者とは、共同相続人のうち被相続人から ①遺贈を受けた者 ②婚姻のための贈与を受けた者 ③養子縁組のための贈与を受けた者 ④生計の資本として贈与を受けた者 の4類型に該当する者に限られます。なお扶養義務者相互間の、義務履行のための生計費の贈与は特別受益に該当しません。持ち戻し期間についての制限はなく、その金額は贈与時の価額ではなく遺産分割時の価額(時価)で計算されます。相続税評価額ではなく実勢価額を意味する時価ですので、仮に非課税財産や評価減対象財産であっても全額を持ち戻さなければなりません。
次に生命保険金です。生命保険金の請求権は、契約に基づき保険金受取人が生命保険会社から受け取るものであり民法上の相続財産ではありません。特別受益額にも該当しないため、遺産分割協議の対象外になります。

 
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