1.相続時精算課税制度の選択
アパートの贈与となれば相応の贈与税が発生するため、これを軽減すべく相続時精算課税制度を検討される方が居られます。贈与税の課税価格が25百万円以下なら、この選択も一案でしょう。但し相続時精算課税制度は単なる延納措置に過ぎませんので、貴方の相続財産が基礎控除額を超えると予想される場合は、通常の暦年課税制度を選択する方が得策です。
2.アパートローン及び入居者からの敷金・保証金の処理
アパートローンが残っている場合は必ず贈与前に完済して下さい。さもなくば不動産の負担付贈与となり相続税評価額ではなく時価での課税が行なわれます。また貴方に想定外の譲渡所得が発生する場合がありますので、この点にもご留意下さい。
次に敷金や預り保証金の処理です。敷金や保証金とは、アパート等の賃借人が賃料その他の債務を担保するため、契約成立の際に賃貸人に対し交付する金銭です。賃貸借契約が終了すれば未払い債務等がない限り返金されますので、法的性格は停止条件付き債務とされています。アパート等の所有権の移転があった場合、新旧所有者間で敷金に関する引継ぎがなくても、当然に新所有者は敷金を引き継ぐとの判例が出ています。このため貸家やアパートの贈与については負担付き贈与が行われたものとして、先に挙げた平成1.3.29付の個別通達により時価課税の適用を受ける可能性があります。
これを回避する手段ですが、贈与時点で返還義務を負っている敷金や保証金相当額の現金を併せて贈与しておけば、負担付き贈与には該当しないとの当局見解が出されています。
3.土地の所有者である親に相続が発生した場合、アパート敷地の評価がどうなるか?
娘さんにはアパートの建物のみを贈与したとします。当然娘さんから地代は収受しないと思います。個人間における建物等の所有を目的とする使用貸借については、相続財産評価の個別通達で土地使用権の評価はゼロとされています。従って基本は自用地として100%評価になります。ところが相続時の建物賃貸借契約が贈与時の賃貸借契約を更新したものである場合(=賃借人の変更がなかった場合)は異なる取扱いになります。この場合は貸家建付地として、2割強の評価減(1-借地権割合X借家権割合)が受けられます。理由は建物の贈与前に結ばれたアパート賃貸借契約については、建物所有者と敷地所有者が同一なので、賃借人は土地使用権を有するとの解釈が通説です。この権利は建物所有権が第三者に譲渡された場合も侵害されませんので、賃借人が相続前と変わらない部分については貸家建付け地になります。
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