相続時精算課税制度を利用したアパートの贈与についてのご相談

Print Friendly, PDF & Email
アパートを所有しています。娘に生前贈与すれば、相続税対策以外に賃料収入が娘夫婦の生活の足しになると思います。どの様にすれば、税金が安くて済むかアドバイスをお願いします。
相続税対策の基本は生前贈与です。毎年子や孫に110万円ずつ現金で贈与(暦年課税)すれば、確実に相続財産が減ります。尤も不動産など高額資産の贈与では持分を分割して贈与せねばならず、登記費用も増えるため使い勝手が良くありません。
そこで思い付くのが、相続時精算課税制度の利用です。25百万円までの贈与であれば、その時点では贈与税が発生しません。ところが相続時精算課税の選択が結果的に不利になる場合があります。遺産総額が基礎控除額を越える場合です。確定申告が必要になるため贈与財産を相続財産に加算せねばならず、暦年課税であれば受けられた筈の110万円の基礎控除の適用がなくなります。
アパートの生前贈与については、この他にも注意を要する点が2つあります。
先ず入居者からの敷金・保証金と銀行借入の債務承継に付いてです。敷金・保証金については、相当額を現金で贈与すると共に債務承継させる必要があります。銀行借入は贈与時までに期前返済し、債務承継の対象外とします。何れも負担付贈与に伴う時価課税を避ける方策です。
次に贈与後の地代支払いです。使用貸借の場合は借地権の認定課税が有りません。相続発生時は貸家建付地として約8割評価になります。これに対し賃貸借ですと、子に借地権が発生するため認定課税が生じる可能性が有ります。
(*)贈与から相続発生までの間に、アパートの賃借人の変更があった場合は、貸家建付地ではなく自用地評価となります。

贈与者の相続財産が基礎控除額を超える可能性がある場合は、分割贈与になっても相続時精算課税ではなく暦年課税を選択する

相続時精算課税による贈与については、贈与者が亡くなると相続財産に加算して課税価格を計算する必要があります。加算後の課税価格の合計額が基礎控除額を超えれば、確定申告の必要があります。これに対し暦年課税であれば、相続開始前3年以内のものを除き相続財産への加算の必要がありません。これが大きな違いです。一旦相続時精算課税を選択すると、同一贈与者については暦年課税に戻すことが出来ません。相続時精算課税制度の基本は、課税時期の繰延べであることを理解した上で選択の適否を判断しましょう。

相続時精算課税で贈与財産価額が25百万円を超える場合の留意点

アパート建物の評価額が特別控除額25百万円以下であれば良いのですが、超える場合は贈与税の納付が必要になります。この場合の対応としては、2通り考えられます。そのまま贈与して、25百万円を超える部分について単一税率20%で贈与税を納める選択。もう一つは贈与税が出ない様に、25百万円を超える部分を受贈者から贈与者に現金で支払う方法です。住宅ローンなどの債務承継も、現金支払いと同様の経済行為です。
結論から言いますと、これは絶対にやってはいけません!負担付き贈与や対価支払いを伴う取引により取得した財産の課税価格は、相続税評価額ではなく時価で評価することになっていますので、想定外の税負担が発生します。(H1.3.29 直評5)

敷金・保証金や銀行ローンの債務承継

敷金とは、アパート等の賃借人が賃料その他の債務を担保するため、契約成立の際に賃貸人に対し交付する金銭です。賃貸借契約が終了すれば未払い債務等がない限り返金されますので、法的性格は停止条件付き債務とされています。アパート等の所有権の移転があった場合、新旧所有者間で敷金に関する引継ぎがなくても、当然に新所有者は敷金を引き継ぐとの判例が出ています。このため貸家やアパートの贈与については負担付き贈与が行われたものとして、先に挙げたH1.3.29付の個別通達により時価課税の適用を受ける可能性があります。
これを回避する手段ですが、贈与時点で返還義務を負っている敷金や保証金相当額の現金を併せて贈与しておけば、負担付き贈与には該当しないとの当局見解が出されています。

*本記事に関する質問や相談をご希望の方は、お電話又はホームの「ご質問/お問い合せ」を利用してご連絡下さい。
 ご来店での初回相談は無料とさせて頂いております。
*申告その他の実務をご希望の方は、ホームの「料金のご案内」をご参照下さいます様お願い申し上げます。
王族時精算課税えねばああいです

関連記事: