上海に所有する居住用マンションの売却益は中国・日本の何れで申告する方が有利か?

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上海のマンションを近々売却することになりました。現在日本に住民票はありません。しかしこの売却で帰国する予定です。それで住民票を復活させることになりますが、所得税納付は売却時点(売買契約書の日付)で日本に居住しているかどうか(住民票の有無)で決まるとの認識ですが、間違いないでしょうか。例えば今年の10月1日に売却して、10月2日に住民登録した場合、所得税を納付する必要はないでしょうか?
かなり日中の所得税を良く研究されている方からのご質問です。現在は海外勤務か何かで上海にお住まいですが、帰国に伴い自宅マンションを処分される予定で、日中何れで譲渡益課税を受けるのが有利か検討されています。(制度上どちらでも課税を受けないとの選択肢はありません) 細目条件が不詳のため断定はできませんが、恐らく中国の居住者として課税を受けられた方が有利ではないかと思います。

 

先ず簡単に、本邦の所得税納税義務者と課税範囲について整理して見ましょう。

非居住者は、国内源泉所得にのみ課税されます。国外源泉所得は対象外です。これに対して(非永住者以外の)居住者は、全世界所得につき課税されます。居住者の意義ですが、法第二条①三において、”国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて一年以上居所を有する個人をいう” と定義されています。これ以外に、施行令第14条(国内に住所を有する者と推定する場合)及び第15条(国内に住所を有しない者と推定する場合)に関連規定が有りますが、要は基本通達2-1に書かれている通り ””住所とは各人の生活の本拠をいい、生活の本拠であるかどうかは客観的事実によって判定する” と言うことであろうと思います。なお、法令中には住民票に関する記述が全くありません。判断材料の一つにはなろうかと思いますが、この届出日を以て居住・非居住の判定日であると主張するのは難しいと思います。

売却時期ですが、資産の引渡しの時期に代えて売買契約などの効力発生の日に拠ることが出来るとのご理解はその通りです。

 

次に日中租税条約ですが、第13条(譲渡収益)で ””一方の締約者の居住者が第6条に規定する不動産であって他方の締約者内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約者において租税を課することが出来る” と定めてあります。従ってもし日本の居住者であれば、上海のマンションの譲渡益に付いて日本の所得税を課することが出来ます。この場合は、第22条に”二重課税の廃止”規定が有りますので、中国側で所得に対して課された税金については日本で外国税額控除が受けられます。日本の非居住者であれば、中国側での課税しかないことは言うまでもありません。

中国側での課税は営業税と個人所得税が考えられますが、140(144)㎡未満且つ所有期間5年以上であれば売却利益に対する営業税は免除になります。また個人所得税についても、所有期間が5年以上でその売却マンションしか所有していない場合は同じく免除になります。外国人に対する不動産の取得は厳しく制限されていますので、恐らく他に不動産はお持ちでないと思います。これらの取扱いは地域によって多少異なりますので念のためご確認下さい。

日本での課税ですが、居住用不動産に係る各種の優遇措置が受けられるかどうかが気になるところです。3千万円控除ですが、海外不動産であっても所与の要件を満たしていれば適用が受けられます。意外に思われるかも知れませんが、措置法第35条には居住用家屋の所在地に関する制限がないためです。従って帰国後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すれば良い訳です。一方、措置法31条の3の6千万円以下の所得に対する軽減税率の適用は受けられません。その他の優遇措置についても同様に不適用となるものが有りますので確認が必要です。

 

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