次に課税国ですが、中国にお住いの間に現地に在る不動産を売却した場合は、中国側での課税のみで、日本で申告・納付をする必要はありません。対して帰国後に売却された場合は、日中租税条約第13条により居住地国たる日本の課税権のほか、不動産が在る中国にも課税権が認められています。そうなると日中で二重課税が生じますが、同第23条②項に拠り日本の所得税法に従って外国税額控除の適用を受けることが出来ます。尤も彼我の税率差等に起因して外国所得税>日本の所得税及び住民税になると、控除し切れない外国法人税が発生するケースも考えられます。日中ともに、一定の居住用財産の譲渡については減免(特別控除)制度を設けていますので、この辺りも考慮する必要があるでしょう。ただ一般論としては、帰国前に中国で不動産取引と関連税務手続きを完結して置く方が得策ではないかと思料致します。
個人の不動産売却に伴う中国側での課税としては、営業税・土地増値税・個人所得税が考えられます。営業税は一種の付加価値税ですが、小規模納税義務者に配慮して営業収入が一定基準に達しない納税義務者は営業税が免除されます。土地増値税は、国有土地使用権やその上に在る建築物等の譲渡益に着目した重課税ですが、個人の一定の住宅の譲渡については徴税が減免されています。残るは個人所得税ですが、5年以上自己使用し且つ家庭で唯一の生活用住宅の財産譲渡所得については免税扱いです。そうするとご相談者のケースは、中国在住中に売却されるのが得策と思料致します。
日本での課税ですが、居住用不動産に係る各種の優遇措置が受けられるかどうかが気になるところです。3千万円特別控除ですが、海外不動産であっても所与の要件を満たしていれば適用が受けられます。意外に思われるかも知れませんが、措置法第35条には居住用家屋の所在地に関する制限がないためです。従って帰国後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すれば良い訳です。一方、措置法31条の3の6千万円以下の所得に対する軽減税率の適用は受けられません。その他の優遇措置についても同様に不適用となるものが有りますので確認が必要です。
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