42才の勤務医です。一昨年父が亡くなり、些少ながら全ての財産を私が相続しました。基礎控除額以下だったので確定申告はしていません。その中に、父が祖父より相続した宮崎県の農村部に在る居住用不動産と農地が含まれています。司法書士に頼んで相続登記は済ませましたが、遠隔地且つ空き家なので今後の維持管理が大変です。租税公課や除草作業委託費を考えれば、この際タダ同然でも近隣住民の方に譲渡するのが得策ではないかと思います。その場合低額譲渡に該当するため、所得税や贈与税の問題が発生する可能性があると聞きました。アドバイスとご支援をお願いします。
このご質問には、制度(建前)上と実態面の2つに分けてご説明した方が宜しいかと思います。因みに当該物件は、最寄のJR駅から10Kmほど離れた田園地帯に位置し、近隣にはゴルフ場や日帰り温浴施設等も在り、所謂過疎地域では有りません。居住用家屋とその敷地、周辺の農地から構成され、相続税評価額計は5百万円、推定時価は6百万円程です。出来れば2-3百万円での一括売却をご希望ですが、年間の固定資産税や除草委託費用の支出が10万円超あるので、買い手が付かなければタダ同然で譲渡しても良いとお考えです。なお当該不動産の取得費は不明です。
(2百万円で一括譲渡した場合)
事情を総合勘案すれば第三者間の正常な取引と考えられます。貴方の所得税と住民税の負担は364千円になります。買手の贈与税負担はありません。
(10万円で一括譲渡した場合)
個人間の不動産取引には見做し譲渡所得課税が適用されません。従って貴方の所得税と住民税の負担は、実際収入金額に応じた18千円になります。一方買手には、相続税評価額5百万円と実際支払額10万円の差額相当の贈与が有ったものとして、510千円の贈与税が課せられます。然しながらこの種の不動産取引は成立しないケースが多く、タダ同然であったとしても売手に相応の理由があれば、非関連者間の正常取引として是認される余地が有ろうかと思料致します。
(2百万円で一括譲渡した場合)
事情を総合勘案すれば第三者間の正常な取引と考えられます。貴方の所得税と住民税の負担は364千円になります。買手の贈与税負担はありません。
(10万円で一括譲渡した場合)
個人間の不動産取引には見做し譲渡所得課税が適用されません。従って貴方の所得税と住民税の負担は、実際収入金額に応じた18千円になります。一方買手には、相続税評価額5百万円と実際支払額10万円の差額相当の贈与が有ったものとして、510千円の贈与税が課せられます。然しながらこの種の不動産取引は成立しないケースが多く、タダ同然であったとしても売手に相応の理由があれば、非関連者間の正常取引として是認される余地が有ろうかと思料致します。
この事例では売買が成立する可能性が有る様ですが、物件によっては皆無に近いもの(特に農地)も少なくありません。その場合には、市区町村に寄付したり相続放棄をすれば良いと書かれた記事を眼にします。残念ながら市区町村がこの種の寄付を受けることは有りません。相続放棄に就いても、他に相続財産が無ければ良いのですが、その様なケースは稀で通常は相応の金融資産等が残されています。相続財産の摘み食いは認められませんので、須らく財産を放棄する相続人は少ないと思います。
そうすると現実的には誰かに引き取って貰うしかありません。贈与する方法も有りますが、どうしても贈与税の問題が出て来ますので、売買の形式をとった方が良いと思います。それでも引き取り手がいなければどうするか。残念ながら筆者には妙案がありません。農業生産法人や専業農家への貸付け・作業委託も考えられますが、いざとなれば種々制約が有る様です。
(お断り)
本記事中には筆者私見に属する部分も含まれていますので予めお断り申し上げます。
⇒令和5年4月27日から「相続土地国家帰属制度」がスタートします。詳しくは ”そうだったのか!相続・不動産” の解説記事をご参照下さい。
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