2.家賃の源泉徴収ですが、借主が法人の場合は徴収義務あり、借主が個人で自己や家族が住んでいる場合は徴収義務がありません。源泉徴収されている場合は、赤字でも確定申告したほうが有利です。
3.日本にあるFX口座の取引利益ですが、日本にP/E(恒久的施設)を有する非居住者であれば課税の対象(P/E帰属所得)になります。貴方の場合はP/Eを有しませんが、平成31年3月に国税不服審判所からFX口座の取引利益は国内源泉所得に該当するとの裁決が出ましたので、これに従えば確定申告が必要です。⇒令和4年1月7日付で国税庁より非居住者に係るデリバティブ取引は国内源泉所得に該当しない旨の公表が行なわれました。従って確定申告をする必要はありませんし、もし貴方に過去に確定申告したものがあれば更正の請求により還付が受けられます。
SPOTベースでの所得税申告もお引受けしています。非居住者が日本で確定申告をする場合は、納税代理人が必要ですのでその様な受任形態になろうかと思います。
1.非居住者に対する日本での課税
非居住者が国内源泉所得を有する場合には、日本で所得税を納める義務があります。これに関連して先の税制改正で、非居住者が恒久的施設(P/E)を通じて行う事業に関する課税原則が帰属主義に改められました。この辺りの理解も必要になります。
実務ですが所得税法に照らして、①国内源泉所得の種類は何か②恒久的施設(P/E)を有しているか否か③国内源泉所得が恒久的施設に帰せられる所得か否か④対価支払時に源泉徴収されているかどうか等をチエックし、併せて居住地国と日本が締結した租税協定を確認します。結構、手間の掛る作業です。
ご相談者が日本に恒久的施設を有しているかどうかですが、所得税法では恒久的施設を、1号P/E(支店・工場その他事業を行う一定の場所)2号P/E(1年を超えて行う建設作業等の場所)3号P/E(契約代理人)の3つに区分しています。本事案は何れにも該当しません。租税協定に定めるP/Eも同様の定義です。
不動産所得は所得税法にも租税協定にも国内源泉所得であることが明記されています。従って原則として確定申告が必要です。
一方FX取引ですが、考えられるのは所得税法第161①項二号の ”国内にある資産の運用叉は保有により生ずる所得” です。ところが政令及び通達には直接的に言及した記述がありません。唯一国税庁Q&AのNo1521(FXの課税関係)とNo1522(先物取引に係る雑所得等の課税の特例)に解説が掲載されています。No1521には、”FXの差金決済により差益が生じた場合は、他の所得と区分し先物取引に係る雑所得として申告分離課税を行います。なお先物取引に係る雑所得等についてはコード1522を参照して下さい” と書かれています。No1522には、”居住者又は恒久的施設を有する非居住者が、一定の先物取引等の差金決済をした場合には、その先物取引に係る雑所得の金額は他の所得と区分して申告分離課税になります” と書かれています。これから判断して、P/Eを有さない非居住者のFX取引利益が非課税扱いであるとも読み取れます。
<平成31年3月25日の国税不服審判所裁決>
国内にP/Eを有しない非居住者が、国内の金融商品取引業者との間で行った店頭外国為替証拠金取引に係る契約上の地位は、所得税法第161条第一号に規定する資産に該当し、当該取引により非居住者に生じた所得は、同号にいう資産の運用、保有により生じた所得として、国内源泉所得に該当するとの裁決が出ましたのでこれに従うことと致します。
⇒令和4年度の税制改正大綱で ”デリバティブ所得は、国内資産の運用・保有所得に含まれないことを法令上明確化する旨が明記された” ことに伴い国税庁は取り扱いを変更したものです。これに伴い非居住者又は外国法人は更正の請求が出来る場合があり(ご相談者に就いては日本/シンガポール租税条約で、雑所得が免税扱いにならない)、一方で居住者又は内国法人は修正申告の必要が生じるケースがあります。
源泉徴収の有無ですがご相談者は個人に賃貸されています。賃借人はご家族の自宅として使用されていますので、源泉徴収の必要が有りません。
なお非居住者の不動産所得については総合課税が適用されます。一方、FX取引については仮に課税対象であったとすれば、申告分離課税が適用されます。
2.非居住者の確定申告
ご相談者は日本で給与の支給を受けていません。給与以外の所得は現在の処不動産所得だけですので、20万円超であれば確定申告をしなければなりませんが、20万円以下なら確定申告の必要は有りません。総合課税とされる所得を有する非居住者の申告・納付及び還付に就いては、居住者のそれを準用することとされています。また被居住者の確定申告は、納税管理人を選定してその者を通じて行う必要があります。
不動産所得が赤字の場合は、3年間の繰越控除制度を利用し他の所得と損益通算をすることが考えられます。これには青色申告承認申請書の提出が必要です。
3.FX取引に係る課税(居住者及びP/Eを有する非居住者)
平成24年以降に行われるFX取引損益の課税関係ですが、店頭取引又は取引所取引の何れであっても同じです。
差金決済により差益が生じた場合は、他の所得と区分して20.315%の税率で課税(申告分離課税)されます。
差損が生じた場合は、他の先物取引に係る雑所得等との損益通算が可能ですが、それ以外の所得との損益通算は出来ません。損益通算で引き切れない損失の金額は一定の要件で3年間の繰越控除が認められます。
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