居住用賃貸不動産の建設費に係る消費税還付申告に付いてのご相談

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現在設立第一期で未開業の法人(3月決算)です。第2期末までに居住用賃貸マンション1棟の新築と、中古賃貸マンション1棟の購入を予定しています。併せて2億円強の投資になります。貴事務所のHP記事を拝見しましたが、顧問税理士に就任頂き消費税還付のご支援をお願い出来ないでしょうか?既に課税事業者選択届出書は提出済みです。

 

北海道の会社様でしたが、東京へもご出張を頂き細部に亙る打合せを行いました。その結果、実務的に対応可能との結論に到り、また相互に信頼に足りる相手との心証を得たのでお引受けすることにしました。その後の建設工事や入居者募集も順調に進んでおり、間もなく決算及び確定申告を迎えます。

賃貸マンションやアパート経営で頭が痛いのが、これ等の新築や物件購入に要する消費税の仕入税額控除が出来ないことです。住宅の貸付は非課税なので、幾ら賃料収入があろうとも免税事業者になります。従って、仕入税額控除が認められないと言う構図です。
そこで一時流行ったのが、建物の竣工・引渡しに合わせて「課税事業者選択届出書」を提出し、仕入等の課税期間の課税売上割合を95%以上にするため、自販機の設置や駐車場貸付により課税売上を計上する方法でした。但し仕入れ等と同時に住宅の賃貸を開始すると、課税売上割合が下がりますので、これは翌年にずらします。単純な手法ですが、建築費に係る消費税の還付が受けられました。
ところが、消費税法には”調整対象固定資産(1取引単位が1百万円以上の固定資産を言います)の課税仕入れ等を行い且つ比例配分法により仕入控除税額を計算したときに、第3年度の通算課税売上割合が著しく変動(変動率が5割以上且つ変動幅が5%以上)した場合は、第3年度に於いて仕入控除税額の調整をしなければならない”と言う規定(法第33条①)があります。これでは折角還付された消費税が取り戻されてしまいますので、第3年度には免税事業者になるか、或いは簡易課税制度を適用して、仕入控除税額の調整から免れる必要があります。第2年度に「課税事業者選択不適用届出書」か「簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、翌課税期間から効力が生じますので、第3年度での調整回避が可能になります。
これが課税当局と納税者の攻防のポイントでした。

1.平成22年度税制改正での規制措置(法第9条⑦、法第37条③)
この抜け穴を防ぐために設けられたのが、”調整対象固定資産の仕入等を行った場合の課税事業者選択不適用届出の制限”措置と、”基準期間がない課税期間中に調整対象固定資産を取得した新設法人の納税義務の免除の特例”(法第12条の2②、12条の3③)措置です。後者は資本金等が1千万円以上の法人に関する規定ですので、本稿では説明を省略します。
前者の内容ですが、掻い摘んで言えば次の通りです。
①課税事業者選択届出書を提出し課税事業者となる場合で
②課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日までの間に開始した各課税期間中に、調整対象固定資産の仕入れ等を行い
③且つその仕入れ等を行った課税期間に付き一般課税で申告する場合には
④調整対象固定資産の仕入等を行った課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以降でなければ、課税事業者選択不適用届出書を提出することが出来ない。
同様主旨で簡易課税制度に付いても選択届出書の提出制限措置が取られました。
ところがこれでも、課税事業者選択届出書により課税事業者になっていない場合や、課税事業者となった課税期間の初日から2年を経過する日までに開始した課税期間後に調整対象固定資産を仕入れた場合には、規制の対象から外れてしまいます。

2.平成28年度税制改正での規制措置(法第12条の4、法第37条③)
平成28年4月1日以降の固定資産の仕入等から適用されるのが、”高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例” 措置です。高額特定資産とは、1取引単位の税抜課税仕入れ金額が1千万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産を言います。事業用と家事用に併用する固定資産については、事業用に対応する金額で判定します。
平成22年度改正で規制対象から外れたものを補追するための措置で、内容は次の通りです。
①事業者が
②事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に、高額特定資産の仕入れ等を行った場合には
③その仕入れ等の日の属する課税期間の翌課税期間から、仕入れ等の日の属する課税期間の初日以降3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間については
④事業者免税点制度の適用がなく
⑤またその仕入等の日の属する課税期間の初日以降3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間は、簡易課税制度選択届出書の提出ができない。
事業者の範囲を、課税事業者選択届出書の提出により事業者となったものから全ての事業者に拡大し、更に仕入等の期間も事業者免税制度及び簡易課税制度の適用を受けない期間と改めたことにより、平成22年度税制改正で規制対象外となった事案の取り込みが可能になりました。
今回の改正で典型的な還付対策は略封じることが出来たと評価する向きも有りますが、そうとも言い切れません。

3.平成28年改正に即した還付策のご提案
節税策は過度に手間や費用が掛るもの、制度の主旨に反する租税回避行為に近いものは避けた方が賢明です。然しながら、業種に因り課税仕入れに賦課された消費税の転嫁が出来ないと言うのはやはり不合理ではないでしょうか。
アパートや賃貸マンション業界の他にも、医療業界などで消費税の仕入税額控除の不合理性に対する不満の声が上がっています。日本医師会は、” 消費税の被りは診療報酬の調整ではなく、直接に税還付で解消すべきである” との要望書を出しています。中央社会保険医療協議会も「何等かの新たな仕組みが必要」との見解で日本医師会の方針を支持しています。
尤も消費税の税額控除の仕組みを抜本的に変えるには相当の日時を要するでしょう。私どもは徒に特例の抜け路を探すのではなく、税負担の公平性と言う間接税本来の趣旨に沿って現行税制に則した実効性のあるスキームで、皆様の消費税還付をご支援します。詳細は幣事務所までお問い合わせ下さい。

 
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