相続により取得した賃貸不動産の減価償却費計算に関するご質問

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サラリーマンです。去る4月20日に母が亡くなり賃貸マンション(12室)の経営を引き継ぐことになりました。8月には母の不動産所得の準確定申告、来年3月には私の確定申告をしなければなりません。相続で取得した不動産については、被相続人の取得価額や取得日を引き継ぐ程度の知識は有りますが、実際に賃貸不動産の減価償却費計算したことがないので全く自信がありません。アドバイスをお願いします。
①取得価額: 200,000,000円
②取得年月: 平成9年1月
③母が選択した償却方法及び耐用年数・償却率: 旧定率法/47年・0.048
④平成28年初の未償却残高: 78,547,436円

 

お母様の準確定申告に於ける減価償却費は、
78,547,436X0.048X4/12=1,256,759円
貴方の確定申告に於ける減価償却費は、
200,000,000X0.022(定額法/47年・償却率0.022)X9/12=3,300,000円 になります。

お母様の減価償却費は、従来の計算通りですので簡単です。
一方貴方の計算ですが、取得価額&取得日&未償却残高は被相続人のそれを引継ぎますが償却方法は引継ぎません。平成10年3月31日以前に取得した建物については旧定額法・旧定率法の何れかの選択が認められていましたが、平成10年4月1日以降の取得分からは旧定率法の選択が認められなくなりました。また平成19年4月1日以降の取得分からは、旧定額法ではなく定額法により償却費計算を行う必要があります。貴方の償却方法選定の基礎となる取得時期は平成28年4月20日ですから、令120条①により償却方法は定額法になります。お母様が選択した償却方法に拘わらず、貴方の償却方法は定額法です。間違え易いのでご注意下さい。
次に耐用年数と取得価額ですが、特に重要なのが前者です
中古資産の取得については、耐用年数の簡便法計算(今回のケースは47年×12ヶ月ー19年4か月+19年4か月x0.2⇒31年)が良く知られていますが、相続による承継取得の場合はこれを用いることが出来ません。耐用年数は飽く迄も法定耐用年数の47年になります。(注)過去にこれに関する税務訴訟が有りましたが、H26年10月の大阪高裁判決、H28年2月の最高裁上告棄却により確定しています。
また被相続人の未償却残高を取得価額にされる方が居られますが、それも間違いです。被相続人の経過年数や未償却残高を引継いで減価償却費を計算しますが、あくまでも被相続人の取得価額2億円が引き継ぐべき取得価額ですので御留意下さい。未償却残高は78,547、435円-1,255、759円になります。
賃貸マンションの所有権変更登記に伴い、登録免許税や司法書士の手数料が発生しますが、これ等を取得価額に含める必要はありません。貴方の不動産所得計算上の経費とすることが出来ます。

 
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