相続税対策としての賃貸マンションの一棟買いが俄かに注目されていますが今後どの様な規制が考えられるでしょうか

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先日の日本経済新聞に ”政府の税制調査会は専門家会合で、不動産を活用した相続税の節税効果について議論した。国税庁は賃貸マンションを一棟丸ごと購入したり、商業ビルを小口化したりする事例で節税効果が大きいと指摘した。今後政府が対策に乗り出す可能性がある。” との記事が掲載された。何故節税になるかの理由が簡単に説明されていたが、特に目新しい内容はない。何れも相続財産の評価基準を定めた相続財産評価基本通達の根幹をなすものなので、これが相続税対策の奇禍になっているとの指摘であれば、相続税制に於ける不動産に係る遺族の生計等への配慮等を一から見直す必要がある。長く続いた不動産市況の低迷時期にはこうした議論は生じなかったが、近時の都市部に於けるマンション価額の高騰や賃貸料の値上げで、国民の間に不満が燻りつつあるため政府も手を拱いている状況ではなくなったのであろうか。
確かに小職の身の回りでも幾つか先駆け的な事象が見受けられる様になった。先ごろ手がけた相続税申告では、被相続人の相続財産中に占める一棟型賃貸マンション(うち共有持分2分の1)の割合が大きく、推定時価207百万円に対し課税価格は約3分の1の68百万円になったため、多額の相続財産の割には拍子抜けする程相続税額が安く収まった。北海道で手広く賃貸マンションを営むお客様からは、駅近の一等地にある8階建て賃貸マンションに想定外の高値で買い乙波が入り、間もなく成約予定との知らせが入った。買主サイドでの高値乙波と相続税対策との関りが良く分からぬが、地方でも一等地の優良不動産には動きが出ていることが窺われ喜ばしい話である。
ここで相続財産としての一棟賃貸マンションの優位性を纏めてみよう。
①実勢価額と路線価との乖離
相続税の土地評価の基本となる路線価は実勢価額の8割程度を目安に設定されている。実際の売買価額は面積の大小・形状・周辺環境等に応じて異なるが、太宗は実勢価額の7-8割である。これを利用して100%評価である現預金等から宅地への置き換えに拠る相続税対策が常套的に行われている。然し乍ら現在の処は、相続直前の置き換えで有っても規制がなく容認されている。
②貸家及び貸家建付地に関する評価減
自用の家屋は固定資産税評価悪の1倍で評価されるが、貸家はこれから貸家権割合(30%)相当が減額される。貸家建付地に就いては自用地価額から、借地権割合✕借家権割合相当が減額される。何れも課税時期に貸付が行われていない部分には適用されない。
③小規模貸付事業用宅地等の評価減
被相続人の親族が、相続又は遺贈により被相続人等が貸付事業を営んでいた宅地等を取得し、かつ申告期限まで貸付事業を承継している場合は小規模宅地等特例に拠り相続税評価額の50%相当が減額される。但し相続開始前3年以内に新たに貸付事業を開始した場合には適用されず、かつ特定居住用宅地等や特定事業用宅地等(何れも減額割合が80%)に特例を適用した場合は、適用限度面積が少なくなる。
③令和6年以降に相続等により取得したマンションの評価方法の変更
改正前の財産評価方法で計算すると、区分所有マンションの相続税評価額は実勢価額の4割程に抑えられていた。他の不動産利用形態との不均衡を是正し、6割程度に引き上げるべく令和5年税制改正で評価方法の変更が実施された。見直しの対象となるマンションは、「区分所有者が存する家屋で居住の用に供する専有部分があるもの」に限定される。従って区分所有登記がされていない一棟物のマンションや事業用の区分所有オフィスは見直しの対象外になった。この理由はテナント物件や一棟ビルは流通制・市場性が低く適切な評価乖離率の算定が困難なためと説明されている。タワーマンションを利用した節税には一定の歯止めが掛ったが、賃貸不動産や小口化商品を利用した節税は手付かずのままである。
令和7年税制改正でこの抜け穴を封じる新たな対策が講じられる様だ。ではどの様な規制が検討されているかだが、賃貸マンションやオフィスビルで相続直前に購入された物件に就いては、路線価ではなく購入価格に基づく評価額に改められる。相続直前とは購入から5年以内の相続を言い、購入価額に基づく評価とは購入価額に相続迄の地価変動を調整したうえで2割程度の低く見積もることが考えられているらしい。

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